日本国おいて何故に外国人が自由に不動産を購入できるか。それは、「日本国がWTO(世界貿易機関)の加盟国だから」である。(人権問題と混同すべきではない。)WTOは、自由貿易促進を主たる目的として創設された国際機関であり、加盟国がサービス分野の貿易自由化を進める為に定めた国際ルールが1995年1月発効の「GATS(ガッツ=General Agreement on Trade in Services)」である。日本語では、「サービスの貿易に関する一般協定」と訳す。GATSでは、協定を結んだ相手国のサービス事業者を、自国のサービス事業者と同等に扱う「内国民待遇」を保証しなければならないとされる。
だから、日本人・日本企業が海外で自由活発に経済活動を行う為にも、自国においてもWTO加盟国の外国人・外国籍企業に自国民と同様の待遇をする必要がある。我々業界人が差別無く外国人と不動産取引を行うことは、微力ながら海外で活躍する日本人・日本企業を応援することになると思いたい。
当社の取引実績においても加速度的に外国人投資家の積極的な収益物件購入が目立つ。外国籍といっても日本に永住権を持つ日本在住の方は日本人の取引と何ら変わりはないのは勿論であるが、日本語が全く話せない(解せない)外国人であっても、日本在住の親戚や知人の協力を得られることが多く、多少の商慣習の違いがあろうとも取引が難しいとは思わなくなった。実務上は語学力よりも外国人が購入した場合の税務・登記・融資・届出等に関しての知識の方が有効だと感じる。最近では外国人が不動産購入する際の代理業務を専業・得意分野とする不動産会社も増えてきた。
これからは、本年(2018年)12月内に発効するTPP(環太平洋経済連携協定)の影響にも注目すべきである。米国の離脱による規模縮小があってもTPP参加11ヵ国約5億人の国内総生産合計は、世界経済の13%に相当し、巨大な経済圏が誕生する。サービスや投資のルールが明確になり、農産物を中心に関税が下がるから日本の消費者への恩恵がある一方で、国内生産者は厳しい競争を迫られることになる。
更に、日本は来年(2019年)2月に発効が見込まれる欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)と合わせ、多国間貿易の枠組み拡大を進めていくことになる。
不動産業界は、「両手取引(コラム№36参照)」の取扱いへの影響を懸念(売主と買主双方の仲介を利益相反関係にある同一人がするのは矛盾するとされ、片手取引になると利益が半減)しているが、世界規模の変革の渦中にあっては小さな心配事に過ぎないように思う。打破されるべき古い慣習があるというのなら改善すれば良い。
これらの変革が自由貿易主義のプロローグなのか、保護貿易主義のエピローグなのかは判らないが、経済成長優先の色濃く、コスモポリタニズム(世界市民主義)とは程遠い気がする。「人類は今、消費社会をコントロールできていない。逆に人類の方がその強力な力に支配されている。(コラム№15参照)」と心配する人もいる。本当に「Win-Win」の関係になると良いのだが・・・。
後ろ向きなことは言うまい。資源の乏しい国、世界に先駆けて少子高齢化が極度に進む「日本」が経済大国の地位を守らんとするならば、「外国人」は、ビジネス成功の主要キーワードであることは間違いないだろう。
※記事の内容は、2018年11月本コラム執筆時の内容です。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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