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  • 【寄稿№81】パリでは、科学者たちが米トランプ政権の「反科学政策」非難




    <2025.4.1寄稿>                                            
    寄稿者 たぬきち
    フランスでは、マクロン大統領の人気が急上昇している。
    ウクライナの安全保障のため、「平和維持部隊」を派遣する有志国連合を主導。フランスの核抑止力を欧州全体に及ぼすと表明したことで、「ドゴール並みに、フランスの威信を高めた」から。

    トランプ大統領による反科学政策に対する米国の「Stand Up for Science(科学のために立ち上がろう)」運動に呼応し、フランスの著名人グループは、「ル・モンド」紙の記事で、3月7日の国際動員デー連帯を呼びかけた。
    グループには、科学者だけでなく、学術コミュニティ代表組織(科学アカデミー、医療機関、学会、組合など)や、教員、学生、科学ジャーナリストも含まれる。

    世界約200都市で開催された3月7日動員デー、さまざまな分野を代表する著名な研究者が、パリのカルチェラタンにあるコレージュ・ド・フランス(国立の特別高等教育機関)で「科学者は危機に瀕している」と演説。
    ソルボンヌ・パリ・ノール大学(旧ソルボンヌ大学再編で誕生)、国立科学研究センター、パリ政治学院など有名機関も、この運動に参加。

    フランス大学長評議会は、「今日は、トランプ政権による科学機関や研究への攻撃に対抗して生まれた、米国の同僚たちのイニシアチブを中継する日です。
    評議会は、民主主義社会における知識、科学の不可欠な役割を再確認し、あらゆる偽情報操作に直面する「学問の自由」を守るため、この動員への幅広い参加を奨励しています。
    フランスのいくつかの機関は、すでに米国で穏やかに働けなくなった同僚の歓迎を申し出ています」。

    米国国際開発庁(USAID)閉鎖の予定に、国際的な研究援助も影響を受けている。USAIDの消滅は、研究プロジェクトの停止、博士課程の学生によるプロジェクトの放棄、研究者間の協力の終了、インキュベーター(スタートアップ支援組織)の閉鎖を意味する。
    フィリップ・バティスト高等教育研究大臣も、トランプの政策は、「主要な国際プログラムに終止符を打つ恐れがある」と、3月7日付け書簡で表明した。

    ナント大学のカリーヌ・ベルノー学長は、科学は「権力に奉仕するイデオロギー」ではないと強調し、米国での攻撃は「科学に対する戦争」に等しいとの談話を発表。
    科学アカデミーも、米国の科学界との連帯、予算削減と検閲に対する懸念を表明した。
    集会は、ナント、ラ・ロッシュ・シュル・ヨン、サン・ナゼール、トゥールーズなどでも開催された。

    米国では、運動の提唱者である5人の若手科学者が、この時期の集団行動の必要性を説明。
    「さまざまな大統領令には、科学、技術、教育に対する全面攻撃も含まれます。「反科学感情」が頂点に達したことが明らかです。私たち5人の若手科学者は、1月20日以降、組織化された反対運動が起きないことに驚きました。科学者はよく、意思表明活動したりせず、自分たちの軌道にとどまるべきだと言われます。しかし、これは全科学者の軌道です」。

    だが全米30カ所でイベントが開催されたものの、フランスよりも数は少なかったうえ、ワシントンD.C.でのデモは数千人しか集まらなかった。
    アメリカの研究者や科学機関は、脅迫、予算削減、解雇の脅威に直面しており、一部の人々は、報復を恐れ、勤務大学名を挙げないことを条件にした。

    そんな米国を離れたい研究者を歓迎すべく、エクス・マルセイユ大学は3月5日、イノベーション、卓越性、学問の自由を助長する環境で研究を続けたいと願う約15人の研究者を歓迎する「Safe Space for Science(科学のための安全スペース)」プログラムを発表。
    ドイツのマックス・プランク協会パトリック・クレイマー会長も、2月初旬には米国からの応募が2~3倍に増えたという。

    ドイツでは、3月7日は、「March for Science(科学のための行進)」として行われた。
    1970年来の「アースデイ(地球環境の日)」の2017年4月22日、世界600カ所で、気候変動や科学研究の予算を削ろうというトランプ大統領(1期目)への抗議デモ「マーチ・フォー・サイエンス」が、当時のドイツでも開催されたため、これにならったのかもしれない。

    ドイツ全国20カ所で計3万7,000人が参加。ベルリンでは約1万1,000人が街頭に繰り出し、予想を大幅に上回った。
    ハイデルベルクの大学広場に集まった約1,800人の人々は、旧市街を行進し、「科学は意見じゃない」、「シュレーディンガーの猫(量子力学の思考実験から)はぶちギレ」と書かれたプラカードを掲げていた。
    ミュンヘンの行進を締めくくる集会で演説したマックス・プランク協会マルティン・ストラットマン前会長は、「科学行進に参加することは、科学者として、そして国際的で多元的な社会の市民として重要です。学問の自由とは、政治的な制限を受けることなく、何を研究したいかを自由に決定できることを意味します。
    科学には国際性、多様性、そして自由が必要です。マックス・プランク協会では、100か国以上の研究者が働いています。科学の自由は、あらゆる民主主義社会の基礎なのです」。

    米政府の資金打ち切りは突然であったため、米国では、すでに多くの学生が大学院に合格したあとだった。
    入学予定の学生に安定した博士論文研究の機会を確保することができないとして、マサチューセッツ州の公立医科大学やペンシルバニア大学も、2025年秋学期の入学許可をすべて取り消さざるを得なくなった。
    インド、韓国、中国からのポスドク学生の多くも、米国の代わりに欧州を目指そうとしているという。

    ところが3月11日、フランスで最も権威あるフランス大学出版局(PUF)は、『目覚めた(woke)愚民主義に立ち向かう』と題する本の出版を中止し、「事前検閲」と非難された。
    3月7日行動と正反対の主張をするこの本は、3年前に企画されたが、当時と今では状況が一変し、「このテーマは明らかに政治的なものになりつつあり、このような状況下では、PUFに危害が及ぶ可能性もあって、出版は延期せざるを得ない」という。
    コレージュ・ド・フランスの学者から、同書を非難し、PUFにデモをかけようという声が上がっていた。

    また3月13日、「ドイチェ・ヴェレ(ドイツ国営国際放送)」と「シュピーゲル」誌は、マックス・プランク研究所が、その評判と最高の研究環境で人々を魅了する一方、若手研究者は上司によるいじめを受けていると、権力濫用を非難する調査を公表した。
    研究所でのパワハラ(アカハラ?)で、研究者の道をあきらめた内外の若者が結構いるのだと。
    そういえば、私も、マックス・プランク研究所のひとつに在籍していたことがあった。

    3月7日運動に対して、リヨン大学・ビジネススクール(EM Lyon)のさる教授は、実に厳しい意見を表明。
    「科学を守る? 大学は自分の裏庭を掃除することから始めたらどうか。学術機関は単なる無実の被害者ではない。彼らは、イデオロギー的大義のため真の理想をとうに忘れたゆえ、現在直面している正当性の危機に大いに責任がある。
    マンチェスター大学の政治学教員の最近の求人広告ほど、特にアングロ・サクソン系大学の傾向を表しているものはない。
    「採用された方は、グローバル政治経済グループの一員となり、グローバル資本主義のダイナミクスに関する重要な疑問、例えば、このシステムが人種、性別、セクシュアリティ、階級、地理に関連する不平等にどのように依存し、それを再生産しているかなどを探究します」。
    こんな基準で採用された「研究者」が、どうして科学の信頼性を主張できるだろうか? ここで探しているのは科学者でなく、採用担当者の思想的ビジョンを共有する活動家にすぎない。「科学のために立ち上がる?」 いいジョークだ。
    たとえそれがトランプ政権の破滅的な決定を正当化しないにせよ、現状の主な責任は彼らにある」。

    フランスの科学の伝統を示す明るいニュースもある。3月25日、エッフェル塔開発協会(SETE)によれば、「ラボアジエ、デュマ、ビシャ(マリー=フランソワ=グザヴィエ・ビシャは18世紀の解剖学者)...エッフェル塔は1889年の創建以来、1階に金色の文字で科学者72名の名前を刻み彼らを称えてきました。
    近い将来、キュリー夫人やクローディーヌ・エルマン(現代の物理学者)の名が彼らの横に並ぶでしょうか?」
    女性科学者もこの「科学の殿堂」の中心に居場所を持てるようにと、パリのアンヌ・イダルゴ市長、ジャン=フランソワ・マルタンSETE会長、および「Femmes & Sciences(女性と科学)」協会は、これらの女性の名前を刻むことを検討する科学委員会を発足させた。


     


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