<2017.11.3記>
「ファインプレー」は見えない。(気づかれない。)
裏返せば誰でも気づくものは「スタンドプレー」に近い。
野球で言うと誰もが取れない強打を体の真正面で当然のように(涼しい顔をして)
キャッチするのが「ファインプレー」、その難度は、野球通にしか見抜けない。
多少難しいライナーを横飛びでカッコよくキャッチするのが「スタンドプレー」
野球通は冷ややかに見ているが、大方の観客は拍手喝采で喜ぶし、盛り上がる。
勝手ながら、そんなふうに私は定義づけている。
例えば、駅のプラットホームで駆け回る子どもを優しく諫めるお爺さんの言動。
「危ないからね。ここで遊んでは駄目だよ。」
恐縮するお母さんにそっと近づき、「お母さん、叱るのも親の務めだよ。」と囁く。
彼は、人身事故を未然に防ぎ、かつ社会の規範を知らしめるが、
事故が起きない訳だから、誰からもその「ファインプレー」が称賛されることは無い。
いや、本人すら気づいていないので「道徳」と言った方が良いかもしれない。
一方、線路に落ちた子どもを、危機一髪、命がけで救ったお兄さん。彼の行動は、全国ネットのテレビニュースで報道され、近く警察から表彰される。この勇気は、称賛に値するし、目の前で救えるかもしれない幼い命があったのならば、私もこれに近い判断をすると思う。
だが、一歩間違えばどうだったのだろう。
その時の「勇気」は「蛮勇」に終わるのであり、彼を取り巻く悲しみは親族、恋人、友人へと拡散していく。
やはり、必要なのは事故を未然に防ぐことだったのだ。
不動産業界でも「ファインプレー」と「スタンドプレー」がある。
ある老朽化が目立つ古ビルのオーナーAさんと賃貸管理会社の担当B君の会話
B君:「この屋外配線は(紫外線で)老朽化していて危険ですよ。ショートしたら火事になりかねません。今年の予算で交換工事をしておいた方が良いと思います。」
Aさん:「B君は心配性だなぁ。この20年危ないと思ったことは無いけどね。ま、いいか、君のいう事はいつも的確だからね。」
B君:「それと、近くの飲食店でクマネズミの被害が出ています。小さくて可愛らしい見た目なのですが、壁を垂直に昇りかねない程の身体能力を持つすごいやつらですよ。」
Aさん:「へぇー、壁を垂直に昇るのかぁ。え、断熱材(グラスウール)を巣作りに使うの。
なにぃ、新素材の給水管(架橋ポリエチレン管)も穴を開けちゃうだって、本当なの?」
AさんとB君の茶飲み話は、「ネズミ談義」で盛り上がっていく。
これは、「ファインプレー」
火事(漏電火災)もネズミ被害(火事・漏水・病原)も未然に防いだことで、その功績が表立って評価されることは無い。だが、配線劣化を放置したならば何らかの被害が出たことであろうことは想像に難くない。
因みに、火災現場で消防士の制止を振り切って大家さんの《ペット》を救いに火の海に飛び込むのは、
残念ながら「スタンドプレー」の類と言わざるを得ない。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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