<2017.11.15記>
本日は、お口直しに「餡子(あんこ)」の話。
不動産業でいう「餡子(アンコ)」とは、
今は死語に近づきつつある業界用語である。
その意味を端的に言うと「3社以上の共同仲介」だろうか。
現在とは比較にならないほど不動産の情報開示が不十分であった昭和の終わりから、
平成の初め頃、この「アンコ商売」で富を得たブローカーも多い。
(業界で言う「ブローカー」とは、少しアウトロー的なニュアンスあり。)
アンコ商売の典型は次の通り。
内密に資産処分をしたい売主Aさんから不動産の売却依頼を受けたB社が、
秘密裏にブローカーのC氏に情報を流したところ、
買主Eさんを連れてきたのは、C氏から売却情報を得た不動産会社D社であった。
この共同仲介の相関関係は、物元(=売主側仲介会社)であるB社と
客付(買主側仲介会社)D社との間に売却情報を橋渡ししたブローカーC氏が位置する構図。
この真ん中に「甘いもの」が挟まれている状態を「アンコ」という。
確かに、狭間に位置するC氏のような立場であっても、情報を横流ししただけで、
等分の仲介手数料を要求することも多く、「旨味」は多い。(仲介人の不正の温床でもあった。)
私は、「アンコ商売」は大嫌いである。(和菓子に使う「餡子」は大好きである。)
そもそも、「楽をして儲けたい」連中にろくな者はいない。(傾向がある。)
勿論、効率良く利益を追求することは大切であるが、「楽をする」のと「効率良く」は全く意味が違う。
特に不当に介入してくるブローカー達はたちが悪い。因みに、彼らは手数料配分を「齧る(かじる)」という。
「今回の案件、ちょっと齧らせてくれないかなぁ。この間(仲介に)入れてやっただろう。今度銀座で一杯奢るからさ。」この様な感じ。もはや「互助会」か。
私は、20代の若かりし頃、物元と客付の間に5社入った商談を纏めかけた。
JR総武線「新小岩」駅前の商店街一等地、まだバブルの余韻が残る時節柄、その取引金額も大きい。
顧客(パチンコ店経営者)より、ほぼ満額で買付(=購入申込書)を取得した私は、
売却情報をくれたA社に売主との交渉時に同席させて頂きたい旨申し入れた。
(人任せの交渉では、良い結果を得ることができないことを痛感し始めていた頃である。)
だが、A社の「先」にB社があるとのことで、A社の了解を得てB社を訪問、担当者と面談する。
すると、B社は、ブローカーC氏から極秘に情報得たという。「ならばC氏を交えて話しましょう。
その代わり売主も連れてきて下さい。」私は苛立ちを覚え始めていた。
ようやく指定場所の全日空ホテル(=当時のホテル名)のロビー(ブローカーの方々は有名ホテルのロビーが好きなのだ。)で売主とお会いする約束を取り付けた。
その場では、明らかに私が最年少であるが、顧客から大きな商談を任された以上、買主の名代として臆することなくC氏から紹介される比較的高齢(皆さん、それなりの風貌)の方々と次々名刺交換していく。
C氏が情報を得たというD氏、D氏と一緒に動いているというE氏、E氏と一緒に売主と交渉しているというF氏。
ロビーに到着した時点で既に(そんなことだろうと)気付いていたのだが・・・。
齋藤「それでは、売主様にご挨拶させて下さい。」
F氏(恐縮しながら):「本日は、具合が悪いようです。」
では、何の為の集まりだったのだろう。まるで「伝言ゲーム」か「お笑いコント」であった。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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