思うところ6.「掛け値(かけね)」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ6.「掛け値(かけね)」



    <2017.11.28記>
    その商才を兄弟ですら恐れたという三井高利が、江戸日本橋に屋号を「越後屋」として呉服店(三越の前身)を開業したのは1673年のこと。越後屋は、それまでの慣習を打ち破り「掛け値なし」の商法で大いに繁盛したという。それまでの代金支払い方法である「売り掛け(=ツケ)」から「現金払い」に限定したことで、代金回収不能のリスクが無い分、リスクを上乗せした「掛け値」を改め、「正札(しょうふだ=定価)」を通常取引とすることに成功したのだ。きっと「習わし」に重きを置くライバル達に疎ましく思われたことだろうが、現金払いを条件とする代わりに本来の価格(正札)を提示することで価格交渉を廃し、商品(反物)の売買単位を縮小して庶民に至るまで購買層を拡大(新購買層を創出)し、圧倒的な支持を得た。また、代金回収業務が不要となったわけでもあり、当時としては革新的な合理化と言えよう。

    現代の不動産業界でも新築分譲時を除く一般的な取引では、「掛け値」はある。正確に言うと「掛け値」とは似て非なるものであり、三井高利翁に敬意を表して本文では以後「カケネ」とカタカナ表記して区別したい。
    「カケネ」は、値引き要求「指値(さしね)」に対抗して予め値引き幅を上乗せした価格であり、言うなれば、「敢えて割高に《ふっかけた》値段」ということだ。

    確かに、「指値」が通る(=値引き要求が通る)と何か得した気分になる。反して「ビタ一文まけません」という売却スタンスではとても冷たい感じがする。相場に確信が持てない一般顧客であれば尚更のこと、内心では、妥当(適正価格)だと思ってはいても「カケネ」かもしれないと邪推して「言ってみたく」なる。誰もが、「高く売りたい」「安く買いたい」と願うのは、世の常ではないか。
    よって、その掛け合い(価格交渉)も醍醐味と割り切って、気持ち良く商取引を行う「知恵」だと解釈したい。

    肝心なところで、当社の姿勢を確認しておこう。
    当社は、三井高利翁の考え方を強く支持する。地元に密着して営業しているので、適正価格は常に把握しており成約予想価格にブレはない。また、商品構成に関しても個人で購入し易い価格帯を心掛けている。違うのは、「現金」には拘らないこと。日用品と違って多額の購入資金を要する不動産は、買い手が金融機関の融資を利用するのは、ごく当然なことであり、決済手続きは煩雑になることも多いが敬遠するものではない。

    「正札(定価)」取引を支持する理由は、事業用・収益用不動産に限ってのことではあるが、売主・買主は互いの「利益」を尺度として客観的に判断すべきであり、「価格交渉」は無駄なプロセスになると考えるからだ。(割高な「掛け値」の表示では、訴求力が劣る分、無駄に広告費も掛かる。)要するに無駄を省くことは、巡り巡って「良いサービス(価格)」に繋がっていくと信じるのだ。
    また、当社が仕入れを行うとき、求められれば、仕入価格の根拠を「ガラス張り」にして説明する。
    不動産に詳しくない売主が価格面で疑心暗鬼のまま取引することがあってはならない。

    円満な取引と事業の継続性を重視するからこそ、「売る」にせよ、「買う」にせよ、「仲介」するにせよ、誠意をもって「適正価格」に重きを置きたい。

    幸いにも当社は、「適正価格」に加えて様々な付加価値を提供することで高い評価を得ている。(と思う。)
    売る・買う・貸す・借りる・直す等々、どんな分野であっても、当社には、「リピーター(=継続取引の顧客層)」が多い。それが何よりの実証ではなかろうか。

    今回のコラムでは、当社が越後屋と同じ日本橋エリアを営業拠点とすることもあって、江戸時代に思いを馳せて三井家のイノベーションを取り上げてみたが、住友家の言う「浮利を追わず」も、近江商人の思想・行動哲学「三方良し」も、その言わんとするところを掘り下げてみれば相通ずるものがある。

    それら先達の含蓄ある金言は、今尚時空を超えて我々の心に響いてくる。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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