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  • 思うところ7.「ゴミ屋敷」




    <2017.12.5記>
    朝、寝ぼけ眼でテレビを見ていたら、「ゴミ屋敷」問題を特集していた。
    よし、本日は眠気覚ましに「不動産屋の目」から、この問題を取り上げてみよう。

    予め断っておくが、私の所見には、医学的根拠や統計学に基づく確たる裏付けは無い。
    但し、不動産業という仕事柄、TVのコメンテーターよりその問題と至近距離にあるのは間違いない。

    「ゴミ屋敷」が発生するメカニズムは色々あるが、一番深刻なのは「シンドローム(症候群)」であると私は睨んでいる。隣人が嫌悪感を抱いているのに「空気が読めない」うえ、「異常なまでの拘り」を考えると「アスペルガー症候群」に類するものか、そのものかもしれないと推察している。
    その正体が発達障害の一種であれば、そもそも悪意がないから、改善が難しい。

    似たような現象でも「性癖」や「怠慢」で説明がつくものは「ゴミ屋敷」予備軍と考えよう。相続人不存在の空家にゴミが「不法投棄」されたものや、誰かを困らせてやろうという「悪意」によるもの、捨てられない「貧乏性」を原因とするものも、単なる結果に過ぎないので、「症候群」と一線を画して考えるべきである。

    その核心を見抜かずに、役人や弁護士がいくら「患者」を論破しても「ゴミの山」は改善されない。人格者と評判の町内会長の説教でも駄目だし、プロレスラーのような剛力の者が威嚇しても結果は同じだ。
    やむを得ず条例を定めて追い詰めようとしても本人は行政指導に従う気が無いのだから強制執行まで時を要す。
    「ゴミ」の定義自体が難しいし、仮に力ずくで改善してもしばらくすれば元の通りになるはずだ。

    「ゴミ屋敷」で恐ろしいのは、隣人たちの資産価値を著しく低下させることだ。時として売れない不動産(=流動性比率0)となる。多少廉価であったとしても好んで「ゴミ屋敷」の隣に住む人はいないのだ。
    看過できないのは、「火事」の原因となること。統計こそないが「ゴミ屋敷」の火事発生率は高いはずだ。
    人命に関わることであれば、資産価値の低下より深刻な問題である。
    だが、憲法29条により守られた「私有財産制度」の壁も厚いし、無理に踏み込めば、刑法130条「住居不法侵入」が持ち出されることだろう。本人がそれを「宝の山」だと言い張れば、刑法235条「窃盗」どころか刑法236条「強盗」の罪に問われかねない。


    この「ゴミ屋敷」現象で、いずれも共通するのは「孤独」
    昔なら家族が諫めて表面化することは無かっただろうし、「家の恥」が表ざたにならぬよう家長が必死に喰い止めたはずだ。二世代以上が同居する伝統的な「大家族」から「核家族」が主流のライフスタイルに変わり、今や「孤独」が蔓延する現代では、問題行動に対する家族の抑止力は脆弱なものとなっている。隣人も「個人の自由」が尊重されて注意することすら儘ならない。


    だからこそ、「症候群」だと判明したならば、それに合わせた具体的な「処方箋」が必要だ。
    まずは、「ゴミ屋敷認定制度」なるものを創設する。一般人の常識をもって受忍限度を超えた「ゴミ」であるか否かを判断すべきなので裁判員制度を準用すると良いだろう。事件ではないのだから執行機関は「市町村」が妥当。再発防止、抑止力の観点から財源は、あくまでも本人の自己負担が前提だ。強制力をもってゴミを撤去するので、「宝の山」を失う患者の心のケア(カウンセリング)も必要になるだろう。「私有財産の不可侵」がどうのと悠長なことを言ってはいられない。自分が被害にあった時を想像したら分かることだ。

    この様な事案において「公共の福祉」は大いに優先されるべきで、「世間様が許さぬこと」があって良い。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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