私は、不動産投資のあり方を「登山」に喩えることが良くある。
目指す頂上を「利益目標」に置き換え、投資家を「登山者」に喩えるならば、「登山」と「投資」は実に良く似ていると思うのだ。
どんなに危険であっても難攻不落の最高峰に最短ルートで挑む冒険家(タイプの投資家)もいれば、手頃な標高の山を選んで安全な迂回ルートを楽しみながら進む初心者もいる。同じ山・同じルートであっても「冬登山」もあれば「夏登山」もあって登山(投資)する人のテーマはそれぞれだ。
投資家のテーマが十人十色なので、ルートも様々である。
収益性(インカムゲイン)重視のルート、譲渡益(キャピタルゲイン)重視のルート、またはその混合ルートなど登山口の選択肢は多い。
また、同じ登山口であっても、そこから「融資」という重荷を背負いながらも直線的に頂上を目指す人もいれば、「自己資金」の範囲でゆっくりと登る人もいる。
日本の山(不動産)で飽き足らず海外遠征(投資)する人が多いかと思えば、円安と日本への期待感からか海外勢が日本の「山」に押し寄せる。
景気の谷間に苦しみながらも、突然「霧」が晴れること(不動産市況の好転)もあれば、運悪く予想外の「吹雪」に襲われること(=例えばリーマンショック)もある。時として(景気の)踊り場で一休みが必要だったりもする。バブル崩壊後約20年に渡るデフレ下においては、積雪で足元がとられて前に進めない「デフレ」という「冬」が長引いて遭難しかけた人も多い。幸いにも近年の「アベノミクス」なるインフレ政策でだいぶ元気になった。
つくづく思うのは、登山(投資)計画には十分な準備が必要であること。日頃からの鍛錬(知識の習得、経済分析、トレンドの把握等々)と投資センス(選択眼)なくしては、怪我をして途中下山の憂き目に遭う。
だから、我々不動産業界の者は、登山者(投資家)の求めに応じて「山岳ガイド」にならなければならないと思う。山岳ガイドは、山(不動産)を熟知していなければならない。航海で優秀なパイロット(水先案内人)が必要なのと同じだ。
登山者の意向を尊重しつつ、無謀な計画であれば、耳障りな意見を言わなければならないこともある。天候の悪化が予想されるなら迂回ルートを提案することも必要だ。
クレバスの多い場所、ビバークできる地形、悪天候の徴候に対する動物的直観、登頂成功者の陰にはその「山」を熟知した優秀な山岳ガイドの存在があるはずだ。
少し言葉遊びが過ぎただろうか。「登山」に喩えながら私が言いたいのは、不動産投資の道に選択肢は多く、同じ時、同じ環境下であっても、その人に適する選択をすべきだということである。
不動産投資セミナーの講師、経済評論家、投資How To本の著者(その他、不動産投資の先生方)が声高に繰り返す「今こそ」とか、「これしか」といったステレオタイプの自説を耳にする度に、私は胸の内で溜息交じりに「それは違うな。」と呟く。それら「上から目線」で評論に過ぎない「自説」を妄信してしまった人々の多くが道に迷っている。信頼すべきは、登山者に寄り添い、時に運命をも共にする覚悟の「山岳ガイド」ではないのだろうか。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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