自画自賛と言われかねないが、当社のスケルトンリフォーム工事(室内の全内装を解体撤去、配線・配管に至るまでのフルリフォーム)によって再生された区分マンション(特にコンパクトタイプ)をお客様にご見学頂くと「あれ?さっき見た同じ位の面積のマンションより広く感じる。」との感想を持たれることが多い。
これは広く「感じる」のではなく、1mmをも無駄にしない商品企画とそれを理解する施工現場の努力の積み重ねの成果であり、「本当に広い」のだ。だから、同面積表示であっても「異空間」なのだと思う。
この異空間を理解するには、壁芯面積(戸境壁の中心線で計測、日常ではこちらが一般的)と内法面積(戸境壁の内側で計測した登記簿面積)の違いを理解したうえで、併せて「平方メートル(m2)」ではなく、「立方メートル(m3)」で評価する意識改革が必要だ。「m3」で評価するということは「有効容積」を重視するということであるが、今なお日本の不動産業界には定着していない。
さて、同面積でありながら、空間を広げるというその手法は本来企業秘密であるが、真似しようとしても簡単にできるものではないので少しだけ披露しておく。ワンルームとしては、少し広めの25㎡タイプを想定してみよう。この「異空間」を創り出す工程を室内の内装を全て解体撤去したところからイメージして貰いたい。(コラム内では実例ではなく、あくまでも仮想空間)
①下足入の裏側が無駄な空間(背面に有効利用されていない奥行70mm、面合わせで生じたデッドスペース)であることを発見。腰高の下足入(W600mm/H900mm)をトール型(W315mm/H1,800mm)に変更して無駄なく設置すると同じ収納力ながらも下足入として割く面積は従前の2分の1以下だ。下足入の表面は姿見(鏡)を設置して更に空間に広がりを演出する。
②間取りを改良して無駄に長い通路(800mm×2,700mm)を極限まで短縮する。廊下を(800mm×1,400mmへ)短縮するということは、その分洋室(または収納)の有効面積(&容積)が拡大するということだ。③予想通りユニットバス(以下「UB」)の裏側は梁下部分が空洞だ。UBは受注生産であるから、工場にUBの天井隅を梁に合わせてL字にカットするよう指示。UBを梁下に無駄なく(従前より200mm奥へ)収めるとゆとりある脱衣所になったうえ、洗濯機用防水パンと独立洗面化粧台も設置できた。
④洋室の天井は配線・配管を工夫して50mm上げる。床も20mm下げる。結果、天井高は、70mmUPした。
⑤洋室壁面のプラスターボード(=遮音性・防火性に優れた石膏ボード、クロスを貼る前の壁材)を貼るにあたり、安易に木枠で下地を作らず「団子貼り」という手法で躯体とボードの距離を縮める。片面で20mm、計40mm洋室の幅が広がる。
⑥トイレと洋室の間の造作壁を90mmの薄壁にする。薄壁の弱点である遮音性は壁内に遮音材(グラスウール)を詰め込むことにより解決できる。コンパクトタイプならではの苦肉の策であるが、40mm薄い分空間は広がる。
①~⑥は、ノウハウの一部に過ぎないが、「同面積・異空間」であることを実証せよと言われるなら、新たに生み出された有効容積を積算してみたら分かる。
しかしながら、利益率が低く、売上げが小さいワンルーム系の再生再販に、上記のような時間と経費を掛ける同業者は少ない。その理由として、そのような努力の積み重ねが正当に評価されにくいからだ。
それでも当社の手掛けた商品は、良く売れるし、入居者も早く決まる。敢えてミリ単位で説明したことは無いが、有難くも当社顧客は良き理解者である。
いずれ「有効容積」という言葉が注目されることを期待したい。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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