<2018.4.10記>
今週は、契約・決済がたて込んでいるのでコラムの執筆を休もうと思っていたら、看過できない人騒がせな紛争をTV報道で知るところとなった。当事者でもないのに看過できないのは決して得することのない私のつまらぬ性分だ。
さて、ここ数日、豊島区の狭あい道路における私道所有者と近隣住民との紛争が報道されている。長年に渡る近隣住民の受けたストレスは計り知れないだろう。彼は、その所有する私道部分につき、他人の通行を排除しようと悪意をもって敷地内から無駄に伸びる松の木の放置をやめない。近接するアパートは、引越作業車が横付けできないから、ベッドや冷蔵庫等の大型家具・家電を手作業で運搬する他ない。罪も無いガスの検針員を殴ることなど言語道断である。足の悪い高齢者であっても松の木に接触するや否や容赦なく罵倒する姿を見るに「義憤」を覚える。
もしかしたら、彼なりの正当な主張があるのかもしれない。マスコミ報道を鵜呑みにする気はないが、百歩譲っても彼の行動は容認できるものではない。なんと醜悪な行動なのだろう。誰か彼の目を覚ますことのできる身内はいないのだろうか。(コラム7.「ゴミ屋敷」でも述べた「孤独」が気になる。)彼の身内や行政が頼りにならんと、「義憤」に駆られて彼と直接衝突する人が出ないことを祈る。
彼は、当然の権利と考えていて誰にも迷惑を掛けていないと思っているようだが、不動産会社としての見立てでは、近接する土地は流動性を失って著しく資産価値が低下している。当社の営業エリア内である「月島」辺りでも狭あい道路が多いが、工事車両が横付けできない、重機も入れないとなれば、建築費は2~3割高くになることを覚悟しなければならない。建築費が割高になるということは、その分土地価格が低下するということになる。
また、引越作業車すら横付けできないとなれば、そのアパートの入居者募集条件は、バルコニーに居ただけで罵声を浴びる日々の精神的苦痛も勘案して割安な賃料設定にせざるを得ないだろう。(私なら賃料が半額でも彼の隣には住まない。)収益還元法による査定方法においては、いくら建物が立派であっても収益性が低ければ、評価もマイナス方向に比例する。
入居したばかりの若者が早々に退去したという。入居者を募集した不動産会社が本当にこの紛争を契約締結前に説明していなかったとしたら宅建業法における重要事項説明違反の可能性が高い。まさに負の連鎖を生んでいる。
道行く人とどうして爽やかな挨拶が交わせないのだろう。ご近所と仲良くした方がずっと幸せだろうに。
我が身に照らして考えるがよい。自分や自分の家族が同じことをされたら悲しいだろう。
大妻女子大学の校訓は、「恥を知れ」だ。学生の頃、女学生から宴席でそれを聞いて「(校訓として)カッコ悪い」と笑い転げたが、今はその自分が恥ずかしい。とても意味深長で気高くもあり、素晴らしい言葉だと心底思う。法で裁かれる前に世間様に恥ずべきことは自らが戒めるべきだ。
私の幼少期に「はじめ人間ギャートルズ」というTVアニメが放映されていた。エンディングで流れるのは、そのマンガ原作者である園山俊二氏作詞(作曲:かまやつひろし)の隠れた名曲「やつらの足音のバラード」である。「何にもない何にもない」で始まるその詞は、哲学的に深く、「宇宙」をも感じさせる広がりがある。主人公たちが暮らす「ギャートルズ平原」には、道らしい道など無い。ましてや境界など。そう、もともとは誰のものでもないのだ。この様なくだらない紛争は、彼が「恥を知る」ことによって早く終止符が打たれて欲しい。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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