思うところ33.「更地」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ33.「更地」




    不動産取引において、「更地渡し」と言えば、売主の負担により建物等の定着物が無い状態で土地が買主に引き渡されることを言う。勿論、買主の使用収益を阻害する付着権利があってはならない。この「更地渡し」、建物解体撤去の費用につき、売主は経費として計上できるし、買主はその費用を心配せずに購入できるから合理的な取引方法の一つだ。価格面で折り合いがつかない時など落としどころにもなる。しかしながら、古家も庭木も無く見通しの良いはずのその「更地」、意外にも「落とし穴」が多い。深みに嵌って怪我をなさらぬようご注意を。

    <年末に建物解体、買主が新年度の固都税額に愕然>

    小規模宅地(200㎡以下)においては、その年の1月1日に建物が存すると課税標準額は、6分の1に減額される。ところが、1月1日に「更地」であると、減額特例の適用は無くなって「非住宅用地」とされ、その年に納める固定資産税は建付地であった時と比べて単純に6倍になるわけではなくとも3~4倍に跳ね上がる。その説明もしないで年の瀬に更地にしてしまうと、5月~6月に到着する納税通知書の額面に驚いたお客様からお叱りを受けること間違いない。

    <決済時に発覚する滅失登記未了の建物>

    現地は数年前から「更地」である。長らく「更地」であったが故、売主の記憶にすらない従前の建物の滅失登記未了は仲介人泣かせの盲点となり易い。決済日当日に司法書士の指摘で発覚するような事態になれば、仲介人は、調査不足の誹りを免れることはできない。残念ながら、プロとしては言い訳無用だ。

    <地中奥深くに残存する基礎>

    由緒ある高級住宅街の分譲地を取引した時の事。老朽化した豪邸(RC造3階建)は、取得した売主(不動産会社)が土地を細分化して売り易くせんが為に解体撤去済であり、仲介人としては、「更地」を案内したつもりだった。しかしながら、契約直前になって売主から地中奥深く6本もの基礎杭が残っていることを知らされた。地下室を造る予定ならば大問題となるから、私は、そのリスクと費用負担について十分な重要事項説明に努めた。買主がそれでも良い(購入する)とご判断されたことは有難かったが、それを「更地」として販売するのはいかがなものか。「地中障害物」については、発売時から当然に情報開示されるべきである。

    <容易でない更地>

    「更地」といっても、売主・買主の認識に違いがあるから注意されたい。建物解体後にある程度のコンクリート片(業界用語では「ガラ」)等が地中に混ざることが珍しくないが、売主側の言う「この位は」が必ずしも買主の許容範囲とは限らない。残置物となる庭石・庭木等については、売主・買主の合意を確認した書面を作成しておかないと思わぬ紛争の火種となる。隣接地権者と共有する境界塀は、売主といえども勝手に解体することはできない。古井戸の取壊しなどは信心深い解体業者から敬遠される。密集地における解体時の騒音と埃に対する苦情は覚悟しておいた方が良い。「更地」にするのも容易ではないのだ。

    最後に、当社分譲地にまつわる「更地」のお話。
    その分譲地は老朽化著しい古家があってどうにも見映えが良くなかった。税務上の理由により、買主が決まってから解体すべき時期であったが、思い切って発売前に「更地」にした。しかしながら、殺風景で「華」が無い。仕方がないので「花」を植えようと思いついた。全くの「遊び心」による発案であったから、色々な種が入っている「お楽しみ袋」みたいなものを買って無造作にばら撒きした。特段の手入れをした訳ではなかったが、程良い雨量が幸いして芽吹くと、とても目に優しい風景になった。これを「更地」でなくなったなどと批判する人は余程のへそ曲がりだ。ご同業の皆様、この「遊び心」お試しあれ。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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