思うところ44.「盲点(凍)」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ44.「盲点(凍)」




    <2019.1.30記>
    本コラムの読者が私の大言壮語を求めていないことは百も承知している。おそらく不動産研究の総論よりも各論、各論よりも実際に現場で起きた事件やエピソード等、読者の不動産取引において参考となりそうな実例の情報開示が求められているのではなかろうか。執筆者自らが現場に携わるからこそ気付く「盲点」のようなもの、それが読者に関心のあるところだと思う。私が読者の立場であったとしても教科書やマニュアル本に載っているような一般論は読む気が失せる。活用できる新鮮な情報とは取材や伝聞より実体験が勝るものだ。

    だから、過去のコラムでも幾度となく言葉を変えて実体験に基づく不動産取引の「盲点」を取り上げてきた。「コラム№12(性悪説)」で触れた管理規約・使用細則の「緩さ」や「コラム№30(微妙)」で紹介した「数値」もそうであるし、「コラム№33(更地)」で述べるところの意外な「落とし穴」にしてもそういうことである。

    こんな寒い日は、昨年の今頃発生したアパートの給湯器の凍結による漏水事故を思い出す。寒冷地を拠点とする同業の皆様には笑われるであろう痛恨のミスだった。当社の営業エリアである東京都心部では、土の露出が少なく霜が降りるのは珍しい。氷柱を見るような極寒を体験することも無いし、どの物件も駅近で寒風の中を長時間歩く必要も無い。よって、寒さ(冷え込み)に対する警戒心が欠如していた。まさに「盲点」だった。

    当社の営業エリア外(遠隔地)である為、一旦はお断りしたアパートの賃貸管理(現在は売却済)であったが、「営業エリア外であることは承知している。BM(建物管理)は自分が責任を持つから、家賃の回収業務と募集・更新手続きだけ頼む!」と都心に保有する資産と併せて当社に管理の窓口を一本化したい顧客の特命に応えて請負った案件だった。従前の賃借人の退去後、当社の手配で原状回復工事が完了したばかりの頃である。

    遠隔地であっても早期に成約することで顧客(貸主)の信頼と期待に応えたかった。よって、AD(=広告費)を払い出してでも契約を優先する募集戦略とした。居住用物件で頼りになるのは、地元に根付く不動産会社である。だが、管理物件でありながら内見の都度立ち会うことができない距離にもどかしさを感じていた。

    漏水事故の原因は、原状回復工事を任せた工務店との他愛もない会話が発端だった。私は、「くれぐれも戸締りを宜しくお願いしますね。」と防犯の注意喚起をすると同時に消灯忘れを警戒するあまり「ブレーカーを落としておいて下さい。」と申し添えた。これが余分な指示であり、大きな間違いだった。

    それから数日後、水道局からの緊急連絡で漏水が発覚した。要するに、ブレーカーを落とした為に給湯器の凍結防止装置が停止、給湯器内に残る水が凍って膨張、その結果配管が破裂したのだ。ブレーカーを落とすことが消灯忘れを回避する手っ取り早い手段、電気代の節約の為であったとしても貸主に多大な迷惑を掛けてしまった。

    正しくは、①給湯器の凍結防止装置の作動を継続する。(ブレーカーを落とさない)または、②「水抜き」と呼ばれる凍結予防策を講じておく、①、②のどちらかを選択すべきであった。

    失敗談ともとれる些細な事例の紹介に過ぎないが、時節柄役に立つ事例であると思う。大家業の皆様、ご同業の皆様、まだまだ寒さ厳しき折、どうか想定外の冷え込みをも想定しつつ、アパート・戸建の空室時の給湯器の凍結防止に留意されたい。

    この漏水事故で、責任をもって請負うべき賃貸管理物件は、スタッフが30分以内で急行できるエリアであるべきことを痛感(「社長挨拶」参照)した。また、毎年冬になると庭の散水栓に黙々と麻布を巻き付ける祖父の姿を懐かしく思った。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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