当社の基本方針として販売用(棚卸資産)の区分所有物件に限り、管理組合総会において賛否僅差の議案には極力物申さないことにしている。第一の理由として、中古マンションを再生再販して売却先が決まると同時に管理組合を去らねばならない短期所有前提の当社が、「自宅として住まう方々」や「非居住者であっても長期保有する方々」と同等に物申すのは不公平であると慮ってのことである。第二の理由として、本業として複数の再生再販を手掛ける当社が全ての物件の管理組合総会に出席することは時間的に難しいからである。よって、「議長(=理事長)」に全権を委任することが多い。批判に晒されながらも管理組合のことを一番真剣に考えているのは、理事長であると信ずる他ない。同じ「議長一任」であっても管理組合の運営に無関心な投資家とは主旨が異なる。
そうは言っても、時間が許せばどの物件に関しても総会に出席したいと思っている。業界人として管理組合が直面する問題とその解決方法を実際に見聞きすることは大切なことだと思う。冒頭の説明をして理事会入りを固辞するも理事が3対3で対立して紛争状態の管理組合に最終枠7番目の理事(中立の立場)として招聘されたこともある。(近年どの管理組合でも理事のなり手が極度に不足している。)また、管理組合総会・理事会のみならず、当社顧客(賃貸管理物件のオーナー)に同行して怒号飛び交う法定再開発の説明会に出席したりもした。
先日、ファミリータイプと単身向けコンパクトタイプが混在するマンションの管理組合総会に出席してみた。議案で印象に残ったのは、「宅配BOX(=宅配ロッカー)」の使用制限のことだった。私は通信販売を殆ど利用しないので全く気付かない問題だった。現場に出向いたからこそ把握できた今時のトラブルである。
100世帯以上のマンションに20区画しかない宅配BOXにつき、特定の個人が常時5区画以上利用するうえ、荷物を長期放置すること度々で他の人の利用が阻害されているのだという。(どうやらたった一人の悪行らしい。)理事会と建物管理会社としては、使用細則で利用期間を定めない限り注意指導も儘ならないと言う。出席者から「直ちに使用禁止にすべき」との強硬論が出るも、代替案として建物管理会社がフロントで物品を預かることは、社の方針として受け入れられないと言う。押し問答になるが建物管理会社の言い分も良く判る。
どの様な事情で商品を放置するのか判らない。当該マンションは60%以上が単身向けのコンパクトタイプである。もしかしたら海外出張の多い仕事で長期不在が多いのかもしれない。(ならば、良識ある「お取り寄せ」のタイミングを考慮すべきだ。)トランクルーム代わりということもないだろう。せっかく取り寄せた商品を放置するなら本人に何ら利益が無い。犯罪絡みの利用でないと良いのだが・・・。
口籠る理事会面々と建物管理会社の言わんとするところを察するに、たった一人の非常識な居住者(利用者)がいて宅配BOXの利用方法の改善を申し入れても「期間の制限などどこにも書いていない!」と所謂「逆切れ」をするらしい。それは、本来「使用細則」の問題ではなく「マナー・常識」の範疇である。気の毒なのは「宅配業者」だ。宅配BOXがいつも埋まっているから度々の再配達となっているに違いない。
宅配BOXの保管期間を最長5日と定める使用細則の変更が承認された。だが、どうも腑に落ちない。注意指導したくらいで改善できるのかに疑問が残る。罰則規定も無いから開き直られたらどうするのか。
マナー違反だけの問題ではない。マンション分譲会社もライフスタイルの変化に伴う「盲点」を正確に捉えて商品企画に活かして欲しい。宅配BOXの附置率は、100%に近づける努力が必要になったのだと思う。インターネットによる通信販売の普及に対応できる住まいづくりが求められている。「困った人」も多いが「常識」も変わりゆくものである。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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