中古マンションの管理の状態を知るのに有効な手段は、管理組合の総会の議事録(直近3期分程度)を閲覧することが基本だと思う。管理運営に重大な問題があったとしても、売主がそれを正確に把握しているとは限らない。不都合な事実(事件・事故・紛争・欠陥等)であれば、買主と利益相反関係にある売主が積極的に情報開示してくれるものか性悪説を以って疑わざるを得ない。
それら客観的判断材料となる議事録は、売主なら保管しているだろうし、少なくとも売主を通じて管理会社に情報開示請求ができる。しかしながら、見学前にいきなり議事録の提出を求めるのもどうかと思う。まずは、実物を見学して購入を前向きに検討する段になってからでも遅くはないだろう。はやる気持ちを抑えて冷静に考えて貰いたい。自分が売主の立場だったら、面識も無い人から膨大な資料請求をされ、私的な事に至るまで質問を浴びたらならば、相手を快く思わないはずだ。問合せの初期は、我々仲介人が即答できるレベルに留めておいたら良いのにと思うことがある。不動産購入は、「知る権利」も大切だが所謂「森を見る」大局観が肝要であり、購入条件の優先順位を整理して「絞り込み検索」をしながら、段階的に確認作業をすれば良いのである。
そこで、(売主・仲介人等)誰にも負担を掛けずに管理運営状況を知る手段として、建物内の「掲示物」を眺めてみることをお勧めする。マンション見学の帰り際で良い。集合郵便受けの傍か1階エレベータホール等、全居住者が通過する場所に掲示板が設置されていると思う。その掲示板に貼り出されている「掲示物」の内容により、管理運営の実態を垣間見ることができるのだ。
色々な「掲示物」を見てきた。「手芸教室に参加しませんか?」とか、「クリスマスパーティーのご案内」など健全な内容は、心豊かに住まう方々の日常が想像されて微笑ましく思う。勿論、大半が「エレベーター・消防点検」や「総会の開催日時・場所」のお知らせ等、建物管理会社や管理組合理事会からの事務連絡であることが多い。
だが、我々不動産業界の者(仲介人)は、次の様な掲示物の内容を警戒する。
「共用部でペットの糞尿が・・・」「バルコニーからタバコの投げ捨てが・・・」「深夜に大声を出すことはやめましょう。」「ゴミの分別を守らない人がいます。」「窃盗事件が発生しました。」etc.
さて、強烈に印象に残っている「掲示物」を紹介しておこう。あるタワーマンションの「掲示物」だが、「この様なものをトイレに流さないで下さい!《度々》処理槽が詰まって困っています。」と建物管理会社の怒りを感じさせる注意喚起の文言の下に、おぞましくも迫力ある浣腸器?(痔の薬の容器?)の山積みの写真(拡大カラー版)が掲載されていた。それが1年近く掲示され続けてとても営業しづらかった。購入検討者が受ける精神的ダメージは大きく、間違いなく「ドン引き」する。
その様な非常識な居住者がそのコミュニティに何食わぬ顔をして生活をしている現実が悲しい。自分の所有物件なら自らの首を絞める様な事(資産価値を低下させるようなこと)をするだろうか。賃借人とてトイレの故障は不便だと思うのだが・・・。全くもって理解できない。
その「掲示物」は、居住者の非行を白日の下に晒し、文言で非難し、映像(写真)で辱めてもなお非行をやめない確信犯であることを暗示している。管理運営の実態を垣間見るどころか「人の心の闇」を覗き見てしまった気がした。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
オフィスランディックは中央区を中心とした住居・事務所・店舗の賃貸仲介をはじめ、管理、売買、リノベーションなど幅広く不動産サービスを提供しております。
茅場町・八丁堀の貸事務所・オフィス, 中央区の売買物件検索コラムカテゴリ