思うところ58.「コンパクト」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ58.「コンパクト」





    本コラム欄において、幾度となく当社のリノベーション事業は、「コンパクトタイプ」の中古マンションの取扱いが多いことについて触れてきた。だが、「労」多く「薄利」のビジネスモデルに疑問を持つ関係者もいる。「更に業績を伸ばす為には、大型(高額)物件を手掛けた方が良いのでは?」と意見されることもある。ついては、本紙面を拝借して「何故そうであるのか」について述べておきたい。

    結論から申し上げると、まず「顧客ニーズ」、次に「地域特性」、そして「リスク回避」の3点が主だった理由ということになる。

    当社の顧客は、個人投資家が過半である。副業として賃貸事業を行う為には、自ずと手頃な価格帯が求められる。また、個人投資家の多くが、節税し易い「税務上の事業規模(目安:「5棟」又は、「10室」以上)」を目指す。区分所有のマンションなら、10戸を保有して「青色申告」したいと考えるのは、当然の投資戦略であるように思う。また、1億円の投資をする時、所謂「億ション1戸」のみを対象(分母1)にするならば、空室時に無収入となるにも拘わらず、高額な共益費のみを支払わねばならなくなる。対して1千万円の「コンパクトタイプ」10戸(分母10)なら、稼働率80%以上(空室は2戸まで)を心掛ければ、景気の動向に左右されにくく、健全な賃貸経営が可能となることだろう。当社が「顧客ニーズ」に応えんとするのは当然の理なのである。

    また、当社の主要営業エリアが、「中央区」中心であり、その大半が都市計画上「防火地域」であることも密接に関係している。「防火地域」にあっては、一定規模の建築物になると木造であっても「耐火構造」で建築しなければならない。それが、収益物件(投資用)として必要な高利回りの「新築木造アパート」を供給できない原因となっている。その「耐火構造」の建築費は、堅固な建物と然程変わらない。勿論、土地値そのものが他のエリアに比べて高値圏にあることが主たる原因である。多少安値で土地を取得できたとしても、新築戸建すら適正な価格帯の供給(分譲事業)が難しい。そもそも中央区に純然たる「戸建エリア」が無い。現存する戸建群は、「防火地域」に指定される以前に建築され、運よく困難な歴史(震災・戦災)をも乗り越えてきた古き良き時代の街並み(例えば、「月島・佃」)である。つまり、手頃な価格帯の再生再販できる木造建築物など皆無に等しいのである。

    そして、「リスク回避」も重要である。不動産取引に「絶対」は無い。投資家にご購入頂くまで、当社の「賃貸事業」の一環でもあり、安定収益の柱となる。保有する覚悟をもってする当社のリノベーション事業においては、冒頭で説明した通り個人投資家と同じく「分母」が必要なのである。分母を増やすには、商業ビルやマンション一棟への一極集中型の事業ではリスクが大き過ぎる。だからと言って、リスク回避を「エリア分散」に求めるならば、地域密着の主義に反し、賃貸管理していくうえで重荷となってしまう。また、区分所有物件ならば、その大半が然るべき建物管理会社に建物管理業務(=BM)が委託されており、その負担は共益費(管理費・修繕積立金等)の支払いをもって免除される。他力本願で心苦しいが、当社は賃貸経営管理業務(=PM)に集中できるのだ。また、適正な資産組み換え(資産管理業務=AM)により成長戦略を描くこともできる。

    楽して儲かるような対象があるならば、皆が群がることだろう。過去30年を振り返っても急成長した不動産会社(の経営者)が初心を忘れて安易に高額価格帯の不動産取り扱いに移行した結果、その多くがデフレの波に呑まれ淘汰された。

    常識に囚われて「変化すること」を恐れることがあってはいけないが、「初心を忘れること」があってはならないと思うのである。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

オフィスランディックは中央区を中心とした住居・事務所・店舗の賃貸仲介をはじめ、管理、売買、リノベーションなど幅広く不動産サービスを提供しております。

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