<2019.9.30記>
近年、世界中で天災地変が増えているように感じる。「ように感じる」などと微妙な表現をしたのは、世界的規模で台風や地震が増えていると感じる一方、一昔前なら知り得ないであろう「地の果ての出来事」までもが瞬時に情報入手できるご時世になって、「増えている、と感じているだけでは?」と些か懐疑的に思ったからだ。
いや、やはり増えている。昔(昭和の時代)は「ゲリラ豪雨」などという言葉は定着していなかった。ある意味「夕立」は風流なものですらあった。片や「ゲリラ豪雨」ともなると災害レベルである。地球温暖化(海水温の上昇)の影響なのか台風も大型化している。降水量に対する「XX年に一度の」といった表現も聞き飽きた。
千葉県に深い爪痕を残した本年(令和元年)の台風15号は、被害状況からすると風速30m級が夜通し吹き荒れたものと推定される。最大瞬間風速は想像を絶する。大概の戸建は、風速30m超を想定していないから築浅であっても屋根が吹き飛ぶ。台風は進行方向右側の被害が大きいと聞く。僅かに進行方向が違っていたならば、首都「東京」の機能が麻痺していた可能性があったことになる。首都機能が麻痺すれば経済的損失も計り知れないものになっていただろう。※本コラムは令和元年9月の執筆
東京都心部の弱点は、「集中豪雨」である。一般的な都市計画においては、降水量50mm超を想定していないと思う。私が(会社員時代に)マンション分譲の新築現場を担当していた頃、局地的ゲリラ豪雨の被害でエントランスに雨水が浸入した物件の購入者から、「瑕疵物件だ!」と激高されたことがある。だが、そんなことはない。その降水量は、明らかに公共下水管そのものの許容量を超えていた。ディベロッパーがどんなに心配りをした設計をしたとしても、敷地外に限界があるのであって、完全に防ぎ切れるものではない。
誰もが異常気象を感じる域に達した昨今、地球温暖化を阻止すべく、二酸化炭素の排出量削減に世界が動いている。だが、環境破壊を食い止めるという大義のもと、それが過剰な消費社会を抑制する為の「判り易い原因」と「公平な解決方法」ということにされている気がする。真実は、二酸化炭素の排出は地球温暖化の複合的な原因の一つに過ぎず、ことの本質は、「自然の摂理」のような気もする。現に億年単位で考えれば、環境破壊など無くとも温暖な「ジュラ紀」や極度に寒冷化した「氷河期」はあったのだから。まあ、そんなことはどうでも良い。これ以上の人類が我欲でする環境破壊を放置することはできまい。
話は戻るが、この度の台風で気になったのは、回避できたはずの被害もあることだ。例えば、ゴルフ練習場の支配人は、この度の天気予報を見た段階で早期にネットを降ろすことに着手すべきであった。倒れた支柱が複数の民家を破壊したが、「建築基準法上適正な建築物」であることは、「当然のこと」であり、最善の策を尽くした上での事故か疑問が残る。
一番気になるのは、規格外の台風上陸が気象庁より予報されていながら、政治的判断が緩慢であったことである。激甚災害についてのあり方をもう少し整理しておく必要があるだろう。時として、「予見」に基づく「英断」が求められる。「被害状況を綿密に調査してから、」「被害が拡大してから、」では遅い。大停電の復旧工事を東京電力のみに押し付けるのは無理があった。
おっと、本コラムで政治的な発言は慎もう。多くを語るまい。
そう言えば、千葉南房総に私のサラリーマン時代の元上司が快適な老後を送るべく移住している。「晴耕雨読」を楽しんでいると宣(のたも)うていたが、この様な大雨なら読書どころではないだろう。あまりにも衝撃的なニュース画像を見て、電話連絡することさえ躊躇する。自分の無力さを痛感するばかりだ。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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