思うところ61.「仲人(なこうど)」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ61.「仲人(なこうど)」




    今でこそ自由恋愛が当然の時代になったが、日本人の「結婚観」は、「家」と「家」の結びつきであるとの考え方が古くから根付いていた。両家の間を取り持つのが「仲人(なこうど)」である。江戸時代がその風習の成熟期であったように思うが、かつての「仲人」は、相手探し・見合いの段取り・結婚までを世話する重要な役割を担っていた。我々の仲介業務をその「仲人」に喩えることにご賛同頂けるのならば、気恥ずかしくとも嬉しい。相手探し(買主・売主、貸主・借主のマッチング)から、結納(購入申込・入居申込)を経て円満の内に結婚(売買契約・賃貸借契約)に導くことができるのなら、仲人(仲介)冥利に尽きる。

    さて、日本国の商慣習と対照的とも言われる米国の不動産仲介業務についても少し解説しておきたい。学ぶべき点も多々あるものと思う。

    米国の不動産仲介業は、とても合理的に分業化されている。まず、日本の宅地建物取引業者に該当するのが「ブローカー(日本で言う『ブローカー』とは全く意味が異なる。)」である。売主のエージェントが「Seller’s Agent」、買主のエージェントが「Buyer’s Agent」と呼ばれ、ブローカーと成功報酬型の雇用契約を締結する。エージェントは、日本国流に言うと「完全歩合制契約社員」である。ブローカーの業績は、その「個」の力に左右される傾向にある。

    日本の流通機構「REINS(レインズ)」に近いのが、全米リアルター協会(National Association of Realtors=NAR)が管理するMLS(Multiple Listing Service)であり、想像以上に情報公開が徹底されている。(所謂「未公開物件」は許されない。)しかも、1990年代から急速にIT化が進んだMLSの物件情報のデータベースの質・量は、日本の「REINS」とは、比較にならない程に充実していると聞く。

    不動産の売却を決意した売主は、セラーズエージェントを選任してMLSに物件登録を指示し、宣伝広告の企画・制作やオープンハウス等の販売活動及び買主側との交渉等を委託する。一方、買主からバイヤーズエージェントに求められるのは、物件情報の提供よりも、購入への的確なアドバイスと売主側に対する交渉である。(各エージェントは、利益相反関係にあると考えるから、日本の「両手仲介」はあり得ない。)

    買主は仲介手数料を支払う必要が無い。売主は、概ね売買価格の6%程度の仲介手数料をブローカーに支払う。仲介手数料は、ブローカーと各エージェントの力関係や貢献度によって配分される。売主側の負担額が大き過ぎるように思われがちだが、裏返せば、住替え先の仲介手数料は不要と考えて良いのだから、住替えをトータルで考えれば、日本の手数料相場と同程度である。買主は、仲介手数料の負担が無いことによって、Appraiser(不動産鑑定士)に不動産鑑定書の作成を依頼したり、Home Inspector(住宅診断士)に躯体・設備の細部に至るまで修繕の必要性などを調査依頼する為の資金的な余裕ができる。

    驚くことに、その物件状況の調査(デューデリジェンス)は、売買契約《後》の一定期間とされる。(日本では、売買契約《前》に仲介会社が調査して行う「重要事項説明」の責任が重い。)売主から情報公開(ディスクロージャー)された内容が、買主側の調査の結果と大きく異なる場合、買主は契約を取り消すことができる。売主側の説明義務よりも買主側の独自調査に重きを置いているように思う。

    紙面の都合により簡略化した説明となってしまったが、私が知るところの「米国流」は以上の通りである。徹底的に役割と責任が明確に細分化されているのが、如何にも「訴訟大国アメリカ」らしい。米国流に寄せつつあるグローバル化の流れを止められるものではないが、「浮利を追わず」「三方良し」を旨とする「仲人」が「和を以って貴しと為す」ならば、日本国流を全否定する必要も無かろうに、と独り言(ご)つ。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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