思うところ66.「分業」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ66.「分業」




    謹賀新年。年初で慌ただしかったこともあり、遅ればせながら新年初のコラム執筆となる。さて、本年(2020年)10月をもって当社が設立10周年を迎えることもあり、少し畏まって「書初め」の心境にてパソコンに向かいたい。「分業」のあり方について初心に帰っての「思うところ」としよう。

    「分業」につき、近代経済学の父とも称されるアダム・スミスは、著書「国富論」の中で「分業こそが富を増やす方法」と述べている。ところが、当社創立時にホームページ内「社長挨拶」で述べた「多能工であるべし」の言葉が独り歩きして誤解されることがあるようだ。改めて申し上げるが、私は、健全な「分業」による生産性の向上と富の分配を何ら否定していない。

    多岐に渡る不動産業務を完全に一人でこなせる超人的な営業マンなどいないだろう。だが、「専門」であることを言い訳に苦手分野から逃避し、「お客様をたらい回しにするようなことがあってはならない」ということを言っているのである。生産性向上の為に健全な「分業」をすることは必要であるが、弊害を生む程の過剰な細分化は慎むべきである。読者も病院や役所で窓口の多さに辟易したことがあると思う。

    事実、不動産の各分野は密接に絡み合っている。実例であるが、ご契約頂いたお客様に「なぜ、当社を選ばれたのか」と尋ねてみたことがある。一番の決め手が「相談したい不動産と当社所在地が至近距離にあったこと」は勿論として、「売るのか」「貸すのか」「直す(リフォームする)のか」全く方針が決まっていなかったからこそ、(委託先候補を5社程面談した結果、)本当に全てを相談できると感じた当社に任せることを決めたのだとの有難いお言葉を頂戴した。

    リーダーが「一騎当千」の気概を持って仕事するのも、社員に「八面六臂」の活躍を期待するのも自然なことだと思う。知識や経験の積み重ねによって鍛え上げられ、創造力を兼ね備えた人なら、AI(人工知能)に仕事を奪われることは無いだろう。裏返せば、漫然と「機械的」に営業とは名ばかりの「作業」をしている人は、いずれAIに職場を追われることになるかもしれない。

    アダム・スミスは、針の製造工程を例にして「分業」の効能を解説した。(針を一人で作るには、針金を切って、穴を開けて、先を尖らせて、の作業は丸一日掛かる。だが、「針金を切る人」「穴を開ける人」「先を尖らせる人」と分業して作れば、たった1日で多くの針を作ることができる、と。)しかしながら、リフォームの現場では、クロス貼替とハウスクリーニングを同一業者が行えば、時間短縮と経費削減が期待できるのも事実であるし、極論だが、ファミリーレストランでウエイトレスが配膳と微笑み(おもてなしの心)を完全分離して、無表情で接客されたら不愉快である。後から「微笑み専任担当」が出てこられても・・・気持ち悪い。

    世間では、政府主導の「働き方改革」が喧伝されているが、「労働時間の短縮」や「休日確保」そのものが目的になってしまっており、経営者は過剰な「分業」という選択を強いられている。そもそも、「製造業」と「サービス業」に同じルールを当て嵌めようとすることに違和感を覚える。かつての官僚主導の「ゆとり教育」の失敗(世代的学力・競争力等の低下)と同じことにならないだろうか。既に「プレミアムフライデー」なる個人消費喚起キャンペーンは失敗したものと多くの人が感じている。

    本来の「働き方改革」は、我々(民間)が独自に創意工夫(例:当社の販売図面・募集図面に必要な間取図は、海外在住の元社員にインターネットを利用して外注)して改革すれば良いことだ。日本人には、「勤勉」のDNAが組み込まれている様に思えてならない。長所は抑え込むより伸ばした方が良い。アダム・スミスの「見えざる手」の理論と同じように「委ねる」ことも大切である。

    話が逸れた。今一度申し上げる、適材適所の「分業」と頼れる「多能工」の話は矛盾しない。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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