思うところ82.「派遣の品格」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ82.「派遣の品格」




    <2020.8.24記>
    篠原涼子さん主演の日テレ水曜ドラマ「ハケンの品格」が8月5日に最終回を迎えた。少し非現実的なコメディ調のドタバタ劇だが、穿った見方をすれば「働き方」を考えさせるような深いものも垣間見える。さて、ドラマとは無関係の話になるが、私は「派遣(社員)」と「品格」という言葉を併せ聞くと、真夏というのに真冬のある日の出来事を思い出す。

    その日、私は現場責任者として新築分譲マンションの販売受託現場(大規模分譲マンションのパビリオン)にいた。直属の販売スタッフ10名程度の他、他部署(女性のみで編成した専門職・販売応援部隊)のスタッフ数名や販売状況に気を揉む分譲主から送り込まれた数名(言わば「監視役」)、そこに派遣社員・アルバイトも合わせると繁忙期は総勢30名超の組織的にも複雑な大所帯となっていた。派遣社員・アルバイトは、来場者を誘導する為に路上に立つ所謂「看板持ち」から初期接客にあたる「受付嬢」、シアター(建物完成予想のCG映像を駆使した映画館的なもの)の「案内係」、正社員と同等に名刺を持って「販売するスタッフ」に至る迄、「スキル」も「人件費」もそれぞれであった。

    天気予報の通り、粉雪が舞い始めた昼過ぎのことだ。他部署の女性スタッフの最年長者が私に耳打ちしてきた。「(本社直属上司から)雪が降り始めたから即刻帰宅するようにとの指示が出ました。従わないと・・・。」彼女は熟練の販売スタッフであり「猛者」である。雪が降り始めた程度のことで接客を放棄して早退するような軟弱者ではない。大組織に有りがちな「保身」から発せられる歪んだ指示と営業戦力としてのプライドの狭間にある苦悩が十分に伝わってきた。問題はその上司の思考回路だ。サービス業である限り、優先して心配すべきは、「お客様」の安全確保である。また、緊急時こそ現場責任者に判断を任せるべきである。マンションパビリオンを臨時閉鎖するか否か分譲主の意向も尊重せねばならない。喩えるなら、旅客機の緊急事態において、パイロットの決断を待たずしてCA(キャビンアテンダント)がお客様より先にパラシュートで逃げるようなものである。

    そんな時、派遣社員のチーフ級の者が直訴してきたのだ。「私達は大丈夫です。お客様が引けるまで残りますから!」と。片や、自身の帰宅を心配するあまり、ソワソワして「雪がどうの」「電車がどうの」といった目の前のお客様のことを省みない者達の低次元の会話を耳にするうちに堪忍袋の緒が切れたのだろう。同じ女性でありながら、派遣社員にお構いなく早退していく女性スタッフに憤りを感じたのかもしれない。少なくとも「時給」の為の直訴でないことが、その真剣な眼差しから読み取とることができた。其処に「派遣の品格」を感じたのである。時として弱い立場の人の方が持つべき緊張感と覚悟を持ち、客観的視野が備わっている。「井の中の蛙」の正社員より、適度な距離感をもって同業他社の舞台裏を数多く見ているからである。

    案の定、天気予報が然程のものでもなかったことから、粉雪が舞った程度では、近隣住民の来場数は減らなかった。分譲主も「書き入れ時」と見てパビリオンの臨時閉鎖は毛頭考えていなかった。残念ながら、往々にして正社員男性陣に「屁タレ」が多い。だから派遣社員の方々の「心意気」が大変有難く心に染みたのである。(せめて、「自分(我々)が残るから、帰宅困難となる遠方の居住者から順次帰宅させましょう。」程度の自己犠牲を伴う助言・提案をする者が現れて欲しかった。そういう合理的な考え方を力強く発信できる者こそ次世代の指導者となれる。)

    映画版「踊る大捜査線」でも主人公 青島巡査部長(俳優 織田裕二さん)が叫んでいる。「事件は会議室で起きてるんじゃない、『現場』で起きているんだ!」ところが、現実の職場では大企業病に蝕まれた組織ほど事件が「会議室」で起きている。

    最近のTVドラマの中では、TBS日曜劇場「半沢直樹」が人気化している。日本人は根っから「勧善懲悪モノ」が好きなのだ。私の会社員時代にも俳優 香川照之さん演じる大和田常務の様な権力が旺盛で悪行の限りを尽くす人物が居たような、居なかったような・・・。だが、私は上司に土下座などさせたことは無い。むしろ、「社の為」「部下の為」「家族の為」、その人が背負うもの全ての為に歯を食いしばって頭を下げることができる人にこそ「美徳」を感じる。よって、臆せずに意見することはあっても、不平不満を口にしない良識ある社員(笑)だったように思う。現実の職場においては、漫画「サラリーマン金太郎」のように上司を殴ることがあってはいけないのである。

    ん、気が付けばいつになく「不動産」と無関係の戯言になってしまった。次回より(お笑
    い芸人:ぺこぱの松陰寺風に)「時を戻そう!」


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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