思うところ90.「集約」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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    <2020.12.15記>
    もう40年以上も前になる遥か昔の微かな記憶である。静岡の片田舎で小学生時代を送るが、ある日の授業で新米教師が興奮気味に語る余談を(余程詰まらない話だったのだろう)行儀悪く頬杖をついて聞いていた。
    但し、東京で大学時代を過ごしたというその新米教師の「東京にはな、電気屋さんばかりの街だってあるんだぞ、」という大都会「東京」の自慢話の断片だけが頭の片隅に残った。何故なら、当時(小学生)の私が経営学上の「相乗効果」や「選択と集中」の理論など持ち合わせていたはずもなく、白物家電が飛ぶように売れた高度経済成長期とは言え、商売敵が軒を連ね、客を奪い合う険悪なムードの街(「東京」は競争社会の怖い街)を想像してしまったからだ。その街とは、私が上京して「なるほど、これか!」と思うことになる「秋葉原電気街」のことで間違いない。私の母校の明治大学(駿河台校舎)からは(健脚ならば)徒歩圏であったし、当社の営業拠点「茅場町」駅から日比谷線で3駅の近距離にあるから何かと縁もある。今では「電気街」の面影は薄れつつあり、「ヲタクの集う街」のイメージが色濃くなった。

    前記「秋葉原電気街」のような街ぐるみのテーマ(方向性)の統一は容易なことではないが、貸主が主導権を握る「ビル運営」ならテーマを統一できると思う。事実、あるビルでは、駅前・目抜き通りに面する好立地を武器にテナントの業種を「医療関係」に絞っている。その階高を見るに建物の設計段階からそう考えていたものと推察する。テナントの募集は本来難しくないはずだ。しかしながら、長らく空室のフロアもある。それは何故か、それはテナントを医療関係に限定したうえ、既存テナントと重複する分野の入居希望者を排除しているからだと思う。(時節柄「コロナ禍」の影響も大)だが、時間を掛けてまでも計画的に医療系のテナントに統一することによって見事に「医療モール」が成立している。無論、緻密な募集戦略は賃料の上値を追求してのものだろうが、その「企画力」に敬意を表したい。元来、FM(=Facility Management、ファシリティマネジメント=施設管理業務)とはそういうものだ。

    区分所有の事務所であるにも拘らず、管理規約で入居者を法律事務所に限定したビル(昭和40年代分譲)も実在する。司法書士や行政書士の事務所としても入居が承認される可能性もあるが、現在は入居者のほぼ100%が弁護士である。よって、適任の弁護士を探して訪ね歩かずとも其処に誰かしらいる(可能性が高い)会館、という見方もできなくはないが、おそらくは「販売戦略」として弁護士側のニーズを基に建物が設計され、管理規約が策定されて弁護士・投資家向けに分譲されたものだろう。仕事柄セキュリティ重視の必要があり日中は守衛(管理員)が睨みを利かせている。また、共用部に男女別トイレ・給湯室が配置されており、専有部分は全て執務スペースとして利用できるから士業にとって使い勝手が良い。何よりも官公庁が集中する「霞が関」に徒歩圏であるというのが入居する先生方の最大の決め手になったことと思う。管理規約上、区分所有者ですら資格無き者は自己使用できないことになるが、その毅然たる管理運営の方針は称賛に値する。

    「集約」することに利があるならば、テナントを「不動産取引」関係に統一したビルがあっても良いのではないだろうか。同じ業態の不動産会社ばかりを「集約」させても意味はないが、不動産取引に必要不可欠な関係者を競合することの無いよう計画的に配置すれば、必要とされる分野のスタッフが商談の場に駆けつけることが容易い。(又は、お客様がフロアを移動するだけで事足りる。)不動産業といっても、住居専門の賃貸仲介業者もいれば、その売買仲介業者もいる。事業用不動産も同様だ。建物管理会社と賃貸管理会社は業種的には「似て非なるもの」である。賃貸管理は仲介会社が兼務できるが建物管理会社は独立した存在が好ましい。リフォームや原状回復工事の相談窓口となる工務店が同席できれば商談・打合せも飛躍的に進む。不動産売買が成立すれば、司法書士の他、測量士・土地家屋調査士等の有資格者の手助けが必要になることも多い。税務上の諸問題を直接税理士に相談したくもなるし、不動産売却の動機が相続・離婚・破産等、紛争を伴うものなら弁護士を頼りたくもなる。逆に税理士や弁護士が不動産の売却をサポートするよう不動産会社に同席を求めることもできる。

    不動産業としての「多能工」を自負する当社であるが、派生業務まで完璧にこなすことは難しい。それ程までに不動産取引の業務は複雑・多岐に絡み合っている。だから、互いを必要とする分野のテナントが同居することには大いにメリット(相乗効果)があると思うのである。

    IT企業を先陣として「在宅勤務」が定着しつつあり、郊外・地方への「分散」の利点が喧伝される「コロナ禍」の昨今、時代の流れに逆行するかの「集約」についての「思うところ」である。だが、人との距離が「密」になる訳ではないし、効率良く仕事することで無駄な移動を削減(生産性を向上)できる。そのうえ、不動産の取扱いに関して「最強のコミュニティ」が誕生するかもしれない。資本関係が無くとも同ビル内の「連携協定」への加盟を入居の条件にすれば良いのだ。

    各分野における良質なテナントが一堂に会する「不動産モール」、どの街にも一つ位はあっても良いと思う。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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