<2021.1.18記>
先日、必要に駆られて「Zoom」利用による顧客との打ち合わせをした。(Zoom: Web会議用クラウドサービス≒複数人同時参加可能なビデオ・Web会議アプリケーション)類似のアプリは他にも沢山あると思うのだが、今のところ無料アプリの中においては、多機能でありながら使い易いことで高い評価を得ているようである。
私は、肩書が会社代表ではあっても、顧客との接点が多い「プレイングマネージャー」であり、どちらかと言うと古いタイプの営業スタイルであることを自覚している。しかしながら、生物学者ダーウィンが唱えた「生き残る者」は、「最も強い者」でも「最も賢い者」でもなく、「変化できる者」だとする「進化論」の本質を理解しているつもりでもある。「コロナ禍」にあって、顧客が望むならば、Web会議・商談用のアプリやVR(virtual reality)を多用することに特段の異論は無い。苦手意識がある訳ではなく、社会的動物として有する「人間力」の低下や「AI」の暴走(の可能性)に一抹の不安を感じているに過ぎない。
なるほど、使い易い。なんと言っても、何時でも何処でも複数人が同時に面談でき、参加・不参加に柔軟性があるのが良い。主催者(ホスト)と招待された者の双方に的確な開催予告がなされるから従来の会議より遅刻者が少ないと思う。途中退出可能な自由度も「変革」の現れであり、形式重視・権威主義の旧態依然とした会合よりも好ましい。また、主催者が用意した資料を画面に表示しながら話すこともできるし、スタンプを用いれば、参加者の賛成や反対の意思を俯瞰的に読み取ることができる。(欲を言えば、スタンプの種類を拡充して欲しい。絵柄によって微妙なニュアンスの意思疎通も可能となる。)チャット機能を利用して特定のメンバー間のみで「陰口」「無駄話」「内緒話」に該当するやり取りさえ可能だ。「オンライン飲み会」が流行るのも分からぬでもない。
日本語圏では、対顧客への連絡も無料コミュニケーションアプリ「LINE」を利用する機会が増えた。無料ビデオ・無料音声通話の使い勝手がとても良いのである。勿論、社内的な伝達手段としても有効であり、「Zoom」に近い利用方法も可能だ。スマホで撮った現場写真多数をアルバムにて取り込み、全員で閲覧しながら話すこともできる。セキュリティの脆弱性が指摘されるから、法人向け有料の「LINE WORKS」の利用も一案だろう。
中国語圏の顧客は、「LINE」同様の無料アプリ「WeChat」の利用が主流だ。ユーザーは10億人を突破していると聞く。先般、顧客から中国語と日本語間の翻訳機能を紹介され、言葉の変換精度が想像以上に高くて驚いた。もし、世界各国の言語につき、「WeChat」同様の翻訳機能を不動産専門用語まで充実させて前述の「Zoom」に取り込むことができるなら、自国語しかできない者であっても全世界の人との商談が可能となる。
話が少し飛躍してしまった。現段階において現実的な話に戻そう。我々不動産業界がこれらのシステムの実用化を急ぐべき一例として挙げられるのは、投資用マンションの「理事会」だろう。居住用マンションと違って海外勢を含め、遠隔地に住まう所有者が多いことが理事のなり手不足の一因となっているが、一堂に会することの難しさにつき、「オンライン理事会」なら多少なりとも改善できるのではないだろうか。併せて「オンライン管理組合総会」も具体的検討段階に入って良いと思う。企業もオンライン株主総会への移行に着手しつつある。
「常識」など実に儚いものである。昭和の終わり・平成の始まりの頃までは、メール連絡という手段は普及しておらず、電話営業よりも顧客訪問や現地案内することが重視された。肩掛けの巨大な(かつ、低性能の)携帯電話を持ち歩く成金タイプの不動産ブローカーもいたが、スマホは存在せず、一般社員が携帯するのはテレフォンカードだった。営業マンは、ポケベルで呼び出されて公衆電話から連絡したのである。(裕木奈江主演「ポケベルが鳴らなくて」なんていう映画もあった。)パソコン数は常に不足気味であったうえに処理能力も低く、営業職には不要な「玩具(オモチャ)」との空気が蔓延していた。その様な精神論を重んじる風潮が上意下達に(やや)過剰気味の中間管理職が介在する余地を助長したのである。また、社員は「歓送迎会」「花見」「打上げ」「暑気払い」「新年会・忘年会」と称して「飲み会」を頻繁に開催し、プライベートな時間を犠牲にしてまでも社員同士のコミュニケーションを図った。(「日本全国酒飲み音頭」なんていう歌もあった。)植木等が歌う馬鹿馬鹿しくも愛すべき「スーダラ節」の世界が現実にあったのである。
今、大国の大統領が国民に「Twitter」で直接語る時代である。伝達手段のあり方が激変したのだ。それでも「コロナVIRUS」は許してくれそうにない。破壊神のごとく我々に更なる変革を迫っているように感じる。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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