思うところ117.「消費税(前編)」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ117.「消費税(前編)」




    <2022.2.1記>
    あくまでも個人的見解ではあるが・・・。

    2023年10月1日(令和5年10月1日)よりインボイス制度(適格請求書等保存方式:要件を満たした請求書や納品書を交付・保存する制度)が導入されるにあたり、当社顧客で免税事業者(個人・法人に拘らず1年間の課税売上高が1,000万円未満の事業者)に該当、かつ事業用賃貸不動産を所有する方に2023年3月31日(令和5年3月31日)までに「適格請求書発行事業者」の登録申請をするよう呼び掛けを開始する。なぜ故に賃貸管理業務を行なう当社が税務署の手先のごとく免税事業者にそれを推奨するのか疑問に思われることと思う。誤解無きよう順を追って解説したい。

    まず、居住用賃貸物件の賃料は非課税であり、事業用(事務所・店舗等)の賃貸物件の賃料については、入居者が個人・法人に拘らず消費税が掛かることは周知のことと思う。ところが、事業用賃貸物件の貸主が免税事業者である場合、これまでは消費税相当額を所得にできたことはあまり知られていない。だから、免税事業者が投資用物件を事業用として賃貸した場合、労せずに消費税相当額の10%分高い家賃で貸すことができ、所謂「貰い得」ということになっていたのである。この「貰い得」に当局のメス(是正)が入る、と解釈したら良いと思う。要するに免税事業者が「適格請求書発行事業者」の登録をしなければ、借主(入居者)が賃料に掛かる消費税を仕入税額控除(課税売上から課税仕入に関する消費税を控除すること)ができなくなるというのである。

    当社の事業(中古マンション再生事業)に「仕入税額控除」を当て嵌めて分かり易く言うと、購入(仕入れ)した不動産の建物に掛かる消費税を仮に「支払い消費税」、売却(販売)した不動産の建物に掛かる消費税を「預かり消費税」と称するなら、「その額が同じ事業年度内で同額(預かり消費税▲支払い消費税=0円)の時、仕入税額控除によって、その年に納付すべき消費税が0円になる。」ということである。だから不動産の再生再販を業とする経営者は、常に事業年度内の預かり消費税と支払い消費税のバランスに目を光らせている。

    もし、貸主が免税事業者のまま一方的に借主に負担が掛かる(仕入税額控除できない)ならば、借主は「それならば、家賃を消費税相当額(10%)値下げして欲しい。」となりかねないと予測している。借主も免税事業者なら理論上実害がないはずだが、今までの貸主の「貰い得」に気付いた借主は容易に納得しないだろう。(借主が翌年度も免税事業者のままとは限らないことにも留意する必要がある。)逆に考えれば、消費税分安く貸していると自負する貸主がいたらインボイス制度に基づく事業者登録を機に消費税相当額の値上げを要求することになるかもしれない。いずれにせよ、課税事業者と免税事業者が絡み合う経済活動の中で「自分だけ(免税事業者)」であり続けることは難しくなる。

    私には然したる政治的信条は無いのだが、「消費税」のあり方には国を挙げて反省しなければいけないと思っている。政党支持率優先の政策や行き過ぎた政治的配慮・思惑で過度に複雑になっている。国民に媚びを売る政党・政治家も良くないし、必要な税制に目くじらを立てる国民も良くない。北欧三国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)を見よ、消費税に該当する付加価値税が20%超と高負担でありながら手厚い福祉政策(高福祉)によって国民の幸福度は高い。世界的に見れば日本の消費税率はむしろ低いのであり、あるべき福祉には相応の負担(税収)が必要であることを理解しなければならない。目くじらを立てるべきは、税の使い途の方なのである。

    免税事業者の存続が認められているかに見えるこの税制は、実のところ逃げ道が殆どなく、政治家と官僚の手のひらに乗せられた感が否めないが、どうやら「とばっちり」に近い状態で当社が貸主と借主間の板挟みになることは間違いがなさそうだ。

    原稿枠が窮屈で少々申し足りない。次回コラムも「消費税」について触れたいと思う。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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