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  • 思うところ125.「宝くじ」





    <2022.6.15記>
    「宝くじが当たったら買うよ!」などという言葉は不動産売買の商談見送りの際に使い古された常套句であり、それ程までに高額当選の確率は低く、ご存じの通り「買わない」の婉曲表現である。嫌みになってしまうが「多空くじ」と称すべきとさえ思っている。高額当選者が黙して語らずということもあるとは思うが、不動産業に携わって30年以上になる私でも宝くじの当選金で家を取得した人に出会ったのはたった1度しかない。(その人はマンションの売買契約の際に自己資金1,000万円の用意がある証として当選番号の新聞の切り抜きと宝くじの写真を満面の笑みで提示してくれた。)

    宝くじの当選金についてはどんな高額当選であっても課税されない。当選金が非課税であることは「当せん金付証票法(通称「宝くじ法」)で保障されている。実は不動産にも「宝くじ」に近い性質の特別控除があって、私はそれを「宝くじ効果」と呼んでいる。その特別控除は居住用資産を売却するに際し、一定の条件を満たせば譲渡所得が3,000万円までは課税されないというものである。簡単(大雑把)に言うと3,000万円で購入した家が値上りして6,200万円で売れたとする。売却経費に(仲介手数料等)200万円要したとしても譲渡益は3,000万円、その3,000万円に課税されないのである。だから3,000万円丸儲け、同額の宝くじが当たったに等しいと思うのだ。
        
    3,000万円特別控除の適用要件は次の通り(①~⑥)である。①次の括弧内a~dを満たす「自宅」の売却であること(a.主に住まう自宅であることb.転居後3年目の年末までの売却であることc.土地の売買契約締結が建物解体から1年以内、かつ土地を賃貸していないことd.単身赴任の場合は配偶者が住んでいる建物であること)②売却先が親族や夫婦間、同族会社など特別な関係にないこと③売却した年の前年、前々年に3,000万円特別控除又は自宅の譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと④売却した年、その前年及び前々年に自宅買換や交換の特例を受けていないこと⑤売却した不動産につき、収用等の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと⑥災害によって売却する場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日迄に売ること、である。まぁ、「宝くじ効果」を得るにはそれなりの制限があるのは仕方ない。その上で3,000万円の控除額上限まで消化できる程の譲渡益が出る事案はかなり限られる。だが、「宝くじ」よりも実現の可能性は高い。

    尚、自宅を夫婦で2分の1ずつ所有していた場合はこの「宝くじ効果」も倍増する。共働きの夫婦が若い頃に3,000万円の家を手持資金と住宅融資で1,500万円ずつ出しあって(共有持分各1/2にて)取得、その家が定年退職する頃に9,300万円で売れた、そんな事案があるかもしれない。昭和30年代、40年代に家を取得、高度経済成長期に現役世代であった夫婦ならあり得ると思う。売却経費に300万円要したとしても譲渡益が6,000万円にもなる。ところが夫婦各々が3,000万円特別控除を適用できるから譲渡税は掛からない。住宅融資を完済していたのなら9,000万円を丸々手にすることになる。即ち6,000万円の宝くじ高額当選と同じ効果になるということだ。

    私は仕事で日本橋人形町に出向くことが多いのだが、人形町駅(出入口A3番)を出てすぐ、人形町交差点に面する小規模ビルの一角にある宝くじ売り場前を通り過ぎた際、第380回LOTO7で「9億2,334万円」の高額当選があったとする告知に一瞬目を奪われた。身近な街で本当に宝くじで億万長者になった人が存在することを実感させられたわけである。冒頭で「多空くじ」であると揶揄したが、この世の何処で誰かが高額当選しているのも紛れもない事実、どんな人が当選したのだろうとの思いを馳せた。ところが、羨むよりも突然の超高額不労所得を手にしたその人がその後に平常心を保てたものか心配になってしまった。

    その宝くじ売り場から程近く、日本橋七福神の一つとして信仰される椙森(すぎのもり)神社(所在:日本橋堀留町1-10-2)の境内には、江戸時代の庶民の楽しみの一つであった宝くじの元祖「富くじ」興業を偲んで「富塚」の碑が建てられている。(大正8年建立、大正12年関東大震災で倒壊、昭和28年再建、「富塚」なるものは日本に此処しかない。)ひとつ当選祈願にでも参ろうか・・・。いやいや私も経営者の端くれ、お金(売上げ)を「神頼み」するのは宜しくない。     

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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