思うところ138.「ウクライナ侵攻」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ138.「ウクライナ侵攻」




    <2023.1.4記>
    不動産について語るべき本コラム欄で忌まわしき「戦争」を取り上げることなど好ましいことではない。ましてや本年度初回のコラムである。本来は仕事始めに相応しい明るく前向きな話題にしたかった。しかしながら、長期化するロシアの「ウクライナ侵攻」の惨状を毎日のように報道で見聞きしていながら、我社のメッセンジャーたるコラムニストが「見ざる・言わざる・聞かざる」といった我関せずの冷めた態度の沈黙をこれ以上守り続けるわけにもいかない。かと言って国際政治絡みの複雑な問題でもあるから、せめてもの配慮として婉曲的な表現を心掛け、できる限り不動産業に紐付けて述べたい。

    この戦争を兄弟喧嘩に喩えるならこうだ。腕っぷしに自信のある自己中心的な言動の兄、対照的に社交的で人気者の弟、その兄が弟に「お前、最近生意気だぞ!(俺に批判的な隣村の連中とばかり仲良くしやがって!)許せん、お前の敷地は本来俺が相続するはずだった。相続登記は錯誤による無効を主張する!」と喧嘩を吹っかけたようなものである。兄はいきなり刀を振り回して弟の大切なひまわり畑を踏み荒らした。だから近隣住民も静観することができずに大騒ぎになってしまったのである。その後、「明日は我が身」と考える大勢の友人の後ろ盾もあってなかなか降参しない弟に業を煮やした兄はとうとう銃を向けた。そればかりか更に破壊力のある銃火器の使用を厭わないことまでチラつかせ始めた。そんな兄にも肩を持つ友人がいて事態をより複雑なものにしている。まぁ、そんな感じだ。

    この領土問題を我々不動産業界に当て嵌めれば敷地境界の紛争だろう。その類いの紛争に関する私の考えはコラム№26(義憤)で述べた通りである。要するに原始時代まで遡れば境界の概念自体が無いのであるから元々土地は誰のものでもない。それを人間の都合や我欲で権利(覇権)を争っているに過ぎないと思っている。

    残念ながら個人間でも紛争が絶えないのと同様に国家間の深刻な領土問題はいつの時代にも存在する。だが、住民投票で他国の領土併合の是非を問うようなことがあってはならない。背中に銃を突きつけられて行なわれるような住民投票の結果に意味は無いし、民主主義的でさえあれば住民投票で国境線の変更に影響を及ぼすことができるというのなら、特定の地域に移民として自国民を送り込み、多数派を形成してから住民投票を行なえば容易に世論操作ができてしまうことになる。

    世界に先駆けて少子高齢化が進みながらも(今のところ)移民を受け入れていない日本(あくまでも「外国人労働者」として受入れ)ではあるが、過疎化した村にカルト教団が目を付け、信者多数を移住させてから教祖を村長選に担ぎ出せばその村はカルト教団が主流派になって先住の人々が肩身の狭い思いをするようになるだろう。その様な閉鎖的なコミュニティを地縁性の無い若い世代が子育て環境として選ぶわけもなく、嫌気が差した良識人の転出ばかりが加速度的に増え、やがてとり残された全村人がカルト教団の支配下に置かれることになりかねない。

    マンション管理組合に準(なぞら)えれば、特定のマンションの管理組合を牛耳ろうと7名で構成する理事会に4名が徒党を組んで立候補したらどうなるだろう。最近は何処のマンションでも役員のなり手が少ないから立候補者が優先されることが多い。要するに100戸の大規模マンションであっても理事の定員が7名なら「我田引水」を目論む4人が建物管理運営の主導権を握ることができるのだ。時として4人に都合の良い管理規約の変更を提案するかもしれない。時として都合の良い管理会社に委託先を変更しようと企むかもしれない。時として都合の良い工務店を大規模修繕工事の発注先として推薦するかもしれない。まぁ、そういうことである。

    幸いにも法治国家である日本では武力を用いて他人の敷地を収奪することはできない。それでも昭和の終わり頃のバブル期においては反社会的勢力の暴力による強引な「地上げ」が横行した。この度のロシアのウクライナ侵攻は暴力的な地上げどころの話ではない。もはや「特別軍事作戦」などという呼称は詭弁というほかない。それは「侵攻」でもなく「侵略」の方が的確な表現であり、明らかに「戦争」の状態にある。国のトップにどんな歴史観があろうとも許されることではなく、罪無き多くの民間人が犠牲になっている現状の言い訳にはならない。倫理観が甚だ欠如しており歴史的な蛮行と断じざるを得ない。

    昨年末、その年の世相を一字で表す漢字は「」と発表された。本年末にはめでたい漢字が選ばれることを心から願う。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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