思うところ148.「駅徒歩1分」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ148.「駅徒歩1分」




    <2023.6.1記>
    不動産広告の駅徒歩表示を端(はな)から信じない人が多い。出鱈目な広告を作成する不動産会社も悪いのだが、そのとばっちりを当社が被るのも癪なので「駅徒歩表示」について少し解説をしておきたい。実のところ、そうでなくとも昨年「不動産の表示に関する公正競争規約」が改正されて以来、本コラム欄で取り上げるべきテーマであると思っていた。

    まず理解しておくべきは、販売対象物件の駅までの所要時間は、1963年に定めた「不動産の表示に関する公正競争規約」により、80mを徒歩1分換算するように規制されている、ということである。限り無く事実に近くとも「駅徒歩0分!」は違反広告であるので、駅直結なら「駅徒歩1分(出入口○番まで約10m)といった客観的事実を以て良心的な補足説明をするよう心掛けたい。尚、80m未満の場合は切り上げて1分としなければならないルールなので駅から対象不動産の距離が81mでも160mでも広告上は「徒歩2分」表示になる。それを大雑把な表示だと言われても・・・。

    他にも誤解される原因は多々あるのだが、現時点の広告規制では、横断歩道や踏切り等を横断する時の信号待ちの時間は考慮されない。また、坂道や歩道橋(階段)の身体への負荷も考慮されない。だから、平坦な80mも急坂で階段の多い80mも同一表示の徒歩1分に他ならないのである。それを嘘つき呼ばわりされても・・・。

    環境によって距離の感じ方が異なることもある。例えば、華やかな商店街をウインドウショッピングしながら帰宅する500mは物足らぬ程に近く感じるだろうが、深夜残業の疲れた体でとぼとぼ歩く民家もまばらな畦道500mは思いの外遠く感じるに違いない。大人か子供かでも、老人か若者かでも、天候の良し悪しでも、手荷物の有無でも、様々な要因で所要時間は異なる。因みに80m=徒歩1分となった経緯は、チコちゃん(私が良く見るNHK総合TV番組「チコちゃんに叱られる!」のメインキャラ)によれば、規約策定担当者の公正取引委員会事務局の鈴木深雪さん(東大法学部卒のエリート、当時20代)という正義感溢れる女性官僚が公正なルールを徹底追究する為、敢えて自らがハイヒールを履いて計測した速度だそうである。(学説でも「10歳から60歳男女の平均的歩行速度は77.3m/分」なので「80m/分」は至極妥当)

    また、駅舎出入口(駅舎に複数出口がある場合は目的地に一番近い出入口)を起点に測って良いとする規約なので、「東京駅」のような広大な敷地であると駅に着いてから改札口まで徒歩5分以上掛かったりする。その上、この度の規約改正前は共同住宅の場合は敷地を着点にして良かったので敷地5千坪超の大規模マンションともなると敷地到着からエントランスまで2分以上要し、50階建タワーマンションともなるとメインエントランス到着後、Wオートロックを経て自宅玄関まで更に2分以上要するから駅徒歩表示に違和感を持たれやすかった。

    以上の通り、不動産業界を取り巻く疑心暗鬼の目もあって誤解されていることも多いのだが、ルールそのものが世間の常識と乖離していたことは否めず、ようやく2022年9月1日に「不動産の表示に関する公正競争規約」が改正された。そのどれもが合点のいく改正であり、異論を挟む余地は無い。強いて言えば、一定規模(私案:敷地1,000㎡以上)の大規模マンションは、管理組合が正確に駅距離を計測し、その公式見解を建物管理会社が発行する「重要事項に係る調査報告書」に記載することを義務付けるようなルールもあった方が良いと思う。不動産会社のスタッフの手作業(キルビメーターと呼ばれる曲線も計測できる道具を用いて住宅地図で最短ルートを測るのが一般的)に委ねてしまうと悪気はなくとも誤差が出やすいからである。実はこの問題、「不動産の表示に関する公正競争規約」に則った駅距離算出アプリ開発して宅建業者にその利用を義務付ければ一気に解決できる。その様なもどかしさを抱えながら、相も変わらず仕事に追われる日々である。


    〔2022年9月1日付「不動産の表示に関する公正競争規約」改正における注目すべき点〕
    <改正点1.>
    大型分譲地など住宅が複数ある場合:最も近い建物からの所要時間と最も遠い建物の所要時間の両方を表示する。
    <改正点2.>
    電車等の所要時間について
    改正前:通勤時に所要時間が平常時の所要時間を著しく超えるときは通勤時の所要時間を明示する。
    改正後:朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示し、平常時の所要時間をその旨を明示して併記できる。
    <改正点3.>
    電車等の乗換えについて
    改正前:乗換えをするときはその旨を明示すること。
    改正後:乗換えをするときはその旨を明示し、所要時間に乗換えに概ね要する時間を含めること。
    <改正点4.>
    物件の起点について:マンションやアパートについては建物の出入口を起点とすること。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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