思うところ156.「共益費の補正」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ156.「共益費の補正」




    <2023.10.2記>
    サラリーマン時代に新築分譲マンションの販売現場でお客様から寄せられたユニーク苦言が今も記憶に残る。苦言と言っても新築分譲の場合は商品企画に納得して貰えなければ抽選や購入の申込に至らないだけなので深刻な問題に発展することはないのだが、一笑に付すことのできない貴重な意見であると思った。とかく苦言・苦情の中に良質な商品企画のヒントが隠れているものである。

    「(エレベーターを使わない)1階住戸なのになぜ上階と同じ共益費なんだ?専用庭の使用料は取るくせにぃ、わしゃ納得いかんぞぉ!」その1階住戸には広々とした専用庭の専用使用権が付いていた。戸建感覚で庭を専用使用できる権利付きであるから相応の「専用庭使用料」の月額徴収がある。商品企画に関与しない販売スタッフ(売り子)に声を荒げて文句を捲し立てる振る舞いはやや品格に欠けるものがあって嫌悪感を抱かざるを得なかったが、彼が主張する通り、上階に親族や友人がいない限りにおいてエレベーターの使用はほぼ無いであろうことは事実であった。だから不公平感を感じるのは致し方ないことだと素直に思った。

    また、ある低層棟(3階建)ばかりの団地内では1棟だけエレベーター完備の棟があり、公平性を保つためにもその棟だけは全戸に管理費とは別にエレベーター使用料の月額徴収が定められていた。問題の1階住戸はエレベーターをほぼ使わないのに140㎡超の住戸だったから、60㎡超の専用庭使用料を加算した共益費の総額が他の住戸(80㎡台主流)に比べると際立って高額設定になっていた。分譲当初からの定めを後から変更することは容易なことではなく、不服申し立てしたところで多勢に無勢で抗いようも無い「エレベーター使用料」名目の徴収は心理的なダメージが大きく、仲介各社の奮闘虚しく長いこと買い手が現れることはなかった。おそらく、販売不振の原因は高過ぎる共益費の設定のみならず、不公平感そのものにあったものと思う。そう考えれば、1階住戸の共益費が補正されるべきとの考え方はあながち間違ったものではないだろう。少なくともエレベーターの使用頻度が極端に低いと思われる分、割安感のある専用庭使用料の設定となっていたのなら、専用庭の魅力(お得感)が上回って共益費の総額については理解が得られたものと思う。

    専有面積の大小にも共益費設定の補正が必要と感じることもある。実のところ、50㎡と60㎡、広さの異なる住戸であっても入居人数やゴミの搬出量は然程変わらない。少子高齢化が進む昨今、都心部では50㎡と100㎡のどちらにも2人位で住まうライフスタイルが多くなっている。修繕積立金が面積按分(又は共有持分)で算出されるのは至極妥当な設定である。だが、管理費についてはどうだろう。面積比程には管理組合への負担を掛けていないと思う。あるワンルームマンション(単身者向けの一律コンパクトタイプ)では多少の面積の差(18㎡~22㎡)に拘らず管理費が一律の設定になっていた。なるほどそういう考え方もあるか、と妙に納得してしまったことがある。

    用途の違いによる共益費の増額の必要性を感じることもある。家族しか住まない居宅と事務所・店舗の共益費が同じ単価で面積按分なのは些か疑問に感じるのだ。もう少し掘り下げて申し上げると社員の出入りしか無い事務所と不特定多数が出入りする店舗とが同じ単価であることは公平な設定とは言い難い。その点では用途によって別途使用料を徴収する管理組合が増えてきたのも腑に落ちるところである。(例:事務所使用する場合は別途月額○○○○円)

    確かに税金の仕組みと同じで、公平性に拘り過ぎると徴収額・徴収方法が複雑になってしまうことは否めない。だが、土地の評価に様々な補正(例:奥行補正、角地補正等)の考え方があるように、また、専有面積が過大であると流動性比率(売れ易さ)が低下する傾向があることまで踏まえると、共益費にも実態に即した補正の必要性を感じている人がいるのではないだろうか。今一度ご自身の住まうコミュニティの共益費一覧表を俯瞰的に眺めてみると良い。其処には見直されるべき不満の火種が発見されるかもしれない。


     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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