思うところ170.「SNS&匿名掲示板の功罪」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ170.「SNS&匿名掲示板の功罪」




    <2024.5.1記>
    成約顧客から寄せられたとする記事を自社ホームページに掲載する不動産会社が多い。実例を示してお客様に安心して貰いたいからこそのごく普通広告戦略である。だが、礼賛一辺倒の記事は信憑性に欠けるものがあり、鵜呑みにできないことは既にお気付きのことと思う。敢えて「お叱りの声」を掲載して自らの評価を下げるような会社などある筈もないから当然と言えば当然のこと、結果として「お客様の声」はお褒めの言葉一色となる。

    そうなると真の評判を探ろうと各種SNS(Social Networking Service)のツイート(呟き)、関連ブログ、匿名掲示板への書き込み等を閲覧してみたり、チャット(インターネット上の対話システム)で見知らぬ誰かに問うてみたりするのだろうがその中には事実に反する酷いものがある。匿名だからこそ得られる貴重な情報がある反面、賛辞ばかりのツイート・書き込みには巧妙な自作自演も多い。歯痒いがその偽りの賛辞も匿名性が隠れ蓑となって真相を暴くことは容易なことではない。BM社(中古車販売会社)の社員とその家族が顧客になりすまして「BM社の営業マンの対応が素晴らしかった!」といった趣旨の書き込みをすることを会社上層部から半ば強いられていた事例は偶々発覚しただけであって氷山の一角に過ぎないと思う。不動産業界でも似たような事例はよく耳にする。また、悪口・陰口は単なる事実無根の誹謗中傷であることも多い。実のところ、当社も賃貸管理部門が被害に遭ったことがある。賃貸事務所の退去清算を原契約の定めに従って粛々と代行するに過ぎない当社がまるで暴利を貪る悪徳業者であるかのような表現で標的にされた。「契約書(の定め)なんか関係ない!(原状回復費用なんか負担するものか!!)」とまで暴言を吐いた挙句の所謂「腹いせ」であった。事実無根の書き込みなど民事上の賠償責任に問われるばかりでなく、刑事責任(名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損罪、脅迫罪、偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪、強要罪等)が問われることさえあるのに人はなぜそんな愚かなことをするのだろう。

    そうかと言って比較サイトも正しい評価であるか怪しいものだ。飲食業界に照らして考えれば分り易いと思う。匿名性を逆手に取り、評点を恣意的に操作して相手を壊滅的な窮地に陥れた事件が過去幾度となく表面化している。一度誹謗中傷が拡散されてしまうとその爪痕とも言うべき履歴がデジタルタトゥ(半永久的に残るインターネット上の履歴)となって被害に歯止めが利かなくなる。相手(競合店)を攻撃しないまでも裏工作の対価を払ってまで自らのお店の評点を強引に引き上げるような匿名の「口コミ」に何の意味があるのだろう。古臭い考え方ではあるが旨いかどうかなんて自らの人脈、己の直感とフロンティア精神で判断すれば良い。自身が選択した店に多少の当たり外れがあろうとも、その選択と出会いそのものが楽しみ、もしくは冒険とでも考えれば良いと思う。どうしても耳寄りな情報を収集したい時は少なくとも誰が発信者で何が根拠か判るものを信ずるべきである。(発信者の取材、実体験に基づく本音こそが望ましい。)また、発信者が明確であったにしてもインフルエンサー(ビジネスとしての情報発信をする人)はスポンサーあってこその職業なので広告宣伝の一手段に過ぎないとの穿った見方をするべきである。膨大なフォロワー数を誇り、カリスマと崇められるインフルエンサーであっても消費者に広告であることを隠して販売促進の一翼を担うとしたら、それは今問題になっているステマ(ステルスマーケティング)行為と何ら変わらない。

    不動産会社選定の参考情報にするならば、いい加減な好評や不評に振り回されるよりも取引の前に免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)が公表している行政処分歴(法令違反があった宅地建物取引業者に対する業務改善の為の指示処分、業務停止処分、免許取消処分等)を閲覧しておくのも一案。因みに国土交通省と都道府県(一部を除く)では行政処分情報をインターネット上で公表している。(国土交通省:ネガティブ情報等検索システム)だが、それが間違いの無い客観的事実ではあっても行政処分歴が無ければ優良業者で有れば悪徳業者とも限らず、本当に悪い奴(会社)ほど強かに法の網をかい潜って無傷であることが多い。やはり信頼できる人からの紹介・推薦が無難といったところだろうか・・・。

    無責任なフェイクニュースが世に溢れ、偽りの賛辞と言われ無き非難が蔓延している。当社のメールアドレスにも毎日のように夥しい数のフィッシングメールが着信する。人がAI(人工知能)過剰に頼るようになって来た。生成AIの作成する文章にも違和感が無い。画像生成も精巧で本物と見紛う。音声生成AIの悪用も心配されるところだ。AIに自我が目覚めたならば彼らに都合良く世論を操作してしまうかもしれない。

    私が憂いているのは肉体的視力の低下ではない。心眼の視野狭窄、即ち人間力の低下である。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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