思うところ173.「コンパニオンプランツ」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ173.「コンパニオンプランツ」




    <2024.6.14記>
    無農薬に拘る菜園ならではのことだが、コンパニオンプランツ(共生植物)を用いて害虫や病気の被害を食い止める手法があることをご存じだろうか。ほんの遊び心で社有地に植えておいた空豆にアブラムシが大量発生したので忌避剤として薄めた木酢液を吹き掛けてみたところ、アブラムシとそのボディガード役の蟻たち(護衛のご褒美としてアブラムシのお尻から甘露を貰う)を撃退したところまでは良かったのだが、アブラムシの天敵であるテントウムシ(アブラムシを捕食する益虫)までもが慌てふためき苦しんでいた。

    そんなこともあってコンパニオンプランツの重要性を再認識した次第である。実を言うとアブラムシばかりを悪者にできないとも思っている。我が家の冷蔵庫内で発芽したジャガイモ、それは既に干からびた状態だったのだが食べ物を粗末にするのも気が引けて空豆の近くに植えておいたところ、残念ながら収穫時には瘡痂病(そうか病)に罹っていた。だから、空豆が弱った遠因は私が苦土石灰を撒き過ぎたこと(ジャガイモはpH5~6.2のやや酸性寄りの土壌を好むにも拘らずアルカリ性に傾け過ぎたこと)にあると薄々は気付いていた。因みに土壌がアルカリ性に傾く現象はコンクリート片(業界用語で「ガラ」)の多い新築現場解体現場でも良く起こる。(土壌がアルカリ性に傾き過ぎると植栽は必要な栄養分が吸収できなかったり、根が呼吸困難に陥ったりして弱る。/豆知識:紫陽花は元々色素を持たない白を除き、土壌がアルカリ寄りになると青・柴からピンクへ、酸性寄りになるとその逆、ピンクから青・柴に花の色が変わる。その仕組みは此処では省略)補足説明しておくと火山大国(草木灰と真逆で火山灰は酸性)で雨が多く土中のアルカリ成分(石灰分)が水に流されてしまう日本の土壌は概ね弱酸性。植物毎に適するpHは異なるが多くの農作物はpH5.5~6.5の弱酸性で良く育つ。(例外:ブルーベリーはpH4.5位の酸性土、ラベンダーはpH6.5~7.5のややアルカリ性寄りの土を好む)苦土石灰は連作等で酸性に傾き過ぎた時のpH調整剤と成り得る園芸資材の一つである。

    コラム№153(役立つ性格分析)で取り上げたのは人の相性について。本コラムの冒頭で取り上げたコンパニオンプランツとは、一緒に栽培する組み合わせによって互いに好影響を与えて病気になるのを防ぎ、害虫を寄せ付けないようにしたり、互いに成長を促進させたりする相性の良い植物のこと。例えば、ウリ科のキュウリの傍らにネギ(ニラでも可)を植えておくとその匂いである程度は害虫が寄りつかなくなるし、ネギの根元に繁殖する菌(拮抗菌)が病原菌を抑制する。(土中の菌にも縄張り争いがある。菌の多様性とそのバランス維持が必要)また、園芸の上級者ともなると害虫対策の知略としてコンパニオンプランツの中でも其処に天敵を預けて育むという意味においてバンカープランツと称するおとりの植物を用いることもある。冒頭の空豆のバンカープランツの代表格は小麦。空豆につくアブラムシの天敵(テントウムシ・ヒラタアブの幼虫・クサカゲロウ等)を小麦が呼び込む。周囲に潜んで迎え撃つその天敵の大活躍によって自ずと空豆が守られるという図式である。

    「植物」のみならず「物」には相性というものがある。「食物」に食べ合わせの良し悪しがあるように。「人物」だって妙に気が合うこともあれば然したる理由が無いのに犬猿の仲だったりもする。人の組み合わせによっては組織の活性化も弱体化も起こり得る。だから「建物」にも。例えば当社が入居するオフィスビル1階には大手都銀のATMが入っている。身近な場所にATMがあることは入出金・記帳・振込等に便利なだけではなく、来訪者に分り易い道しるべともなるし、警察官の立寄所でもあるから何となく安心できる。願わくは「お洒落なカフェ」があれば、と思ったりもする。なぜなら、建物の雰囲気が良くなるうえに我々にとっては少額の経費を以て憩いの場にも、打合せ場所にも供することができるからである。共同住宅なら1階に「コインランドリー」があったら居住者も近隣住民も嬉しいと思う。その利便施設の経営者も儲かるし入居者も至近で利用し易い。勿論、入居稼働率がUPすれば大家さんも助かる。クリーニング店も同じことだ。コミュニティの「華」となる花屋さんだって悪くない。(花が好きな人は多いがアレルギーでもない限り花が嫌いな人はいないと思うから。)

    意外にも評価が分かれるのがコンビニエンスストア。その入店を謳い文句にして建物上階の入居者を募集することが多いし、当社の営業エリアではプラス効果が大きいことに異論は無い。ところが、特定の地域(どちらかと言えば「郊外」)ではその店舗前に少々ヤンチャな若者達(所謂「ヤンキー」)が夜な夜な集まって風紀を乱すことがある。それが其処への入居を断念させる原因となりかねないのも事実である。因みに最悪の相性は病院と至近距離の火葬場・斎場・墓地の類い。それらが病院からある程度離れていたとしても、病床に臥して死に怯え患者の視界に入ってしまうならば、その景色はその人に耐え難い強烈な精神的ダメージを与えるに違いない。縁起を担ぐ結婚(フランス語:mariage)式場とそれら嫌悪施設との相性は説明するまでもないだろう。食材に喩えるべきものではないがそれこそマリアージュしてはならぬ組み合わせである。その他、最悪の相性とまで言わないが共同住宅のオーナーが下階への入店を敬遠しがちな業種としては、カレー店は「臭気」、焼き鳥店は「煙」、焼き肉店については「臭気」と「煙」の両方、居酒屋やカラオケ店は「騒音」が受け入れのネックとなることが多い。尚、食べ物を扱うお店の入る建物に関しては総じて近隣住民までもが害獣・害虫(鼠・ゴキブリ等)の被害を警戒しなければならなくなる。よって、重飲食店と住居との相性は悪く、音の出る業種は防音対策が入店を認めるにあたっての大前提と言わざるを得ない。

    コラム№155(ユニークマンション)では共同住宅の階下に銭湯があったら面白いと申し上げたが、私が最も推奨するのは老人ホームと幼稚園・保育園を併設とすること。正確に言うと近過ぎれば感染症拡大や接触事故が懸念されるので同一敷地内を低木の垣根で仕切った程度の別棟にて近接とするのが望ましい。園児達が無邪気に遊ぶ姿はきっとお年寄りに活力を与えることだろう。また、お遊戯会を時折でも良いから老人ホーム内でお披露目することを願う。孫、曾孫世代との触れ合いがお年寄りの退屈な日々に変化もたらして微笑みを生むばかりではなく、温かい拍手を浴びるであろう園児達もやり甲斐を感じるだろう。核家族が普通になった時代だからこそ、異なる世代に接点を設けることも必要なことではないだろうか。それが作為的なものであったにせよ、である。「誰もが老いる」という現実を子供達が目の当たりにして其処から何かを感じ、何かを学ぶだろう。

    コラム№90(集約)では得意分野の異なる不動産会社なら同じ建物内でも共存共栄が可能であることを、不動産取引に必要不可欠な関係者と物理的に近い関係になれば相乗効果も期待できることを述べている。とうとう私がアブラムシを不動産業に紐付けて語るまでになってしまったのかと呆れること勿れ、それらは全て核心を「共生」とする至って真面目なテーマである。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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