思うところ180.「バリューUP!」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ180.「バリューUP!」




    <2024.10.1記>
    我々(不動産会社)の仕事は、仕入れた(取得した)不動産に何らかの付加価値を産み出してこそ大義のあるものとなる。仮に安値で仕入れることができた不動産が何もせぬまま高値で売れたとしても、それは投機的な売買と見做されがち、俗に言えば「不動産転がし」と揶揄されかねないのである。我が国には過去バブル経済崩壊の苦い経験があり、「不動産転がし」に対しての銀行の目(≒金融庁の指導)は厳しい。例えば、100坪の土地を2区画に細分化した程度の宅地分譲では規模的に上位の銀行程、その事業資金の貸付には消極的であるように感じている。採算面も担保力も申し分ないプロジェクトであったとしても、不動産会社が借入の経費が割高・高金利のノンバンク(銀行以外の金融機関の総称)を利用して仕入資金の調達をすることが多いのにはそんな裏事情がある。要するに一定規模の建売事業を継続(安定供給)できないなら、それは正業には値しないということだろう。私(当社)としては、大き過ぎる土地を需要ある適正価格帯に細分化して流動性を高めることも、小さ過ぎる土地を併せて適正面積に再整備することも立派な付加価値創造だと思っているが、安易な金儲けを嫌う日本人の感覚として「額に汗して働くべし!」という行動哲学は大いに賛同できるし、不動産業への過剰貸付は我が国の金融システムの根底を揺るがしかねない危険性を理解している。

    和製英語バリューアップ(Value up、価値向上)という言葉が表現として的確であるか否かはさておき、その方法には様々なものがある。代表的な事例は当社も得意分野とするリノベーション事業だ。傷みが著しい建物の売主は改修費やその手間(労力)を勘案すれば、その分は安値で不動産会社に売却したとしても納得できると思う。其処に我々の商機があるわけであり、設備・仕様・間取り変更等、改良のアイディアとノウハウを用いてバリューアップ(再生)された再販価格ならば買主も納得してくれると思う。水廻りまで一新するスケルトンリフォーム(フルリフォーム)工事にせよ、私がブラッシュアップ(Brush Up)と呼んでプロジェクトの性質を仕分ける部分補修工事にせよ、どちらも仕入れた不動産のバリューアップの施策に他ならない。その結果としてコラム№20(適性)でも述べた「三方良し」が成立する。

    コラム№141(底地は投資対象になる?)に書いた通り、複雑な権利関係を整理して商品化するのも不動産事業として成立すると思う。不動産会社が借地権付の古家を取得後、当事者(賃貸人)として賃借人・占有者に対して建物明渡し交渉を行い、複雑に絡み合った付着権利を抹消除去、地主から底地を取得して所有権化、又は地主に底地を買い上げて貰い所有権化すれば不動産価格も再評価できる。根気も、時間も、資金力も要するが権利関係を整理することで資産価値を向上させることができるわけだ。これも業として正しく行なえば、「三方良し」の関係を築くことができる。

    コラム№168(路地状敷地)で述べたように路地状敷地、その形状から「旗竿地」とも「敷延(しきえん)」とも呼ばれる評価の低い土地であっても、隣接地権者と協議して区画を改良することも可能であるし、その協議が不調に終わるならば、隣接区画を買収するか、隣接地権者に譲渡することで整形地を創り出すこともできる。袋地(=他の土地に囲まれて公道に通じていない土地、コラム№71№72参照)も同じ理屈で価値を向上させることができると思う。区画形質の変更により新しい価値を見出せるのである。

    勿論、用途や運用方法で付加価値を見出すことも可能。シェアオフィス・コワーキングスペース・貸会議室などのビジネスモデルが実例として分り易い。新法(2018年6月施行の「住宅宿泊事業法」)の規制(「旅館業法」対象外の条件は宿泊日数が年間180日以下に制限)でやや下火になってしまったものの、民泊事業も空家対策の有効活用法として一時はブームとなった。有効活用に関する私の考えについては、コラム№104(細分化)№155(ユニークマンション)№173(コンパニオンプランツ)を今一度お読み頂けると幸いである。

    バリューアップの手法は無限に近いものがある。創造力を有していることを前提にすれば、それに気付くか気付かないかに過ぎない。(才能があっても切磋琢磨すること無く、長年に渡って過剰な分業に甘んじると生来有していたはずの創造力も失われ易い。)そして共通するキーワードは「三方良し」の精神。一対一の格闘技なら勝つか負けるかである。ところが健全な事業なら其処に携わる関係者全員の幸福を追求することができる。所謂「Win-Win」の関係を構築することが可能ということを申し上げている。そして私が理想とする「三方」とは、ややもすると人を傷つける三角形のような鋭角的なものではなく、取引を中心に弧を描く「円」であり、其処から円満かつ無限に誰かと繋がる美しい輪(和)なのである。それは「縁」と言うべきなのかもしれない


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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