思うところ181.「二股・三股」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ181.「二股・三股」




    <2024.10.15記>
    あるゴルフ場から会則を一部変更する旨のお知らせが届いた。今後は予約したプレー当日を起算日として1週間前を割り込むような直前のキャンセル、ゴルフ場運営会社の立場からしてみれば迷惑行為に他ならない所謂「ドタキャン(土壇場キャンセル)」に対しては所定のペナルティフィを徴収するという内容のお知らせだった。丁寧な文体でありながらもマナー違反に対する静かなる怒りが滲むその通知文を一読した後に思わず苦笑いしてしまった。実は自分にも思い当たる節があったからである。予約が思うように取れないことに業を煮やした仲間内で「やる、やらないは別として早めに(翌月毎週)予約だけはしておこうじゃないか!やらぬならキャンセルするまでのことなんだから。」と申し合わせをしたばかりであった。土日・祝日の良い時間帯は実態と乖離する過密な予約状況が常態化、直前に頻発する予約キャンセルを待たねばならない悪習に辟易していたこともあって、我々被害者がいつの間にか加害者になりかねない程に良識が麻痺していた。

    他のプレーヤーの機会喪失とゴルフ場の逸失利益を考えれば、当り前と言えば当り前の会則変更であり、痛いところを突かれた気がして苦笑しつつ、この現象は賃貸業界の二股三股(時にそれ以上)の入居申込に似ているな、とも思った。コラム№95(幻の物件)№120(法人契約)で述べたように東京都心部では住み替えのトップシーズンになると需給バランスが崩れて人気物件の争奪戦になり易い。(人気物件=当社の営業エリアでは不足気味の手頃な価格帯の単身・DINKS向けのコンパクトタイプ)人気物件においてはいち早く申込をしたつもりでも他と競合すれば必ずしも借りられるとは限らない。家主側もドタキャン対策や入居者の選り好みで次順位・それ以降の商談も受け付けることが多く、焦る入居希望者はやむを得ず二股三股の申し込みをしてしまう。やむを得ずの二股三股ならまだしも、実態を隠して手当たり次第に複数の先行申込(見学せずに申込)をし、できる限り多くの物件を囲い込んでから1物件を選択すれば良いだけと考える悪質なケースも少なくない。その結果、悪貨が良貨を駆逐するかのごとく誰もが対抗手段として二股三股の申込をしてしまうわけだ。そんなことだから人気物件の争奪戦は一層過熱する悪循環に陥るのである。しかしながら、1人で3戸も申し込めば当然その内2戸はキャンセルすることになる現実に目を背けるのは如何なものか。恣意的な二股三股の入居申込は無意識の内に我欲を優先するゴルフ場の仮予約と問題点が酷似している。

    コラム№119(ブラック)で紹介した事案を今一度本題の引き合いに出しておこう。その昔、ある優良企業にお勤めのパワーカップルが広域(一都三県)、かつ価格帯もバラバラ、しかも中古・新築を問わない戸建やマンションにつき、脈絡のない融資審査と購入申込キャンセルを繰り返した結果、ある大手銀行の融資否決(信用情報機関に否決の履歴が残ったものと推察)を皮切りに、ついには他の大手銀行においても融資審査が通らなくなってしまった。やはり、違法性が無くとも信用を失うような安易な二股三股(そのご夫妻の購入申込&融資審査は後に3ヶ月間で9股と判明)の行いはすべきでないと思う。融資審査を金融機関に取次ぐ不動産会社も、その事前審査を引き受ける金融機関も無駄な時間と労力を費やすことになりかねない。社会的地位のある大人であろうと不誠実な行いを繰り返せば、イソップ寓話のオオカミ少年のように信用されなくなってしまうということである。

    だが、全ての二股三股がいけないとまでは言わない。例えば大学受験。浪人生活を覚悟して希望の難関校唯一校に絞る受験生には惜しみなく声援を送りたいが、親に心配を掛けまいと己の力量を見極め、複数校を受験することによって滑り止め対策をする学生がいたとしても、それを弱気だとか志が低いなどと他人がとやかく言うべきではないだろう。チャレンジの代償、リスク回避、次善の策、処世術の内と割り切れば良いと思う。

    就職試験の二股三股だって致し方ない面はある。必ずしも就職したいと思う企業に受かるわけではないのだから。大富豪の御曹司・ご令嬢ならいざ知らず、願い叶わぬとも誰しも何らかの職を得て生計を立てねばならない時が来る。だから、万が一に備えた保険としての就職先確保も恥ずべきことではないだろう。但し、就職試験の最終段階の面接で入社の意思確認をされた学生の模範回答「最も入社したいと思う会社の内の一つです。」にロジックの破綻を感じるのは私だけなのだろうか。(「最も」ならば1社では?)

    さて、二股三股の恋愛についてはどんな所見を述べれば良いのだろうか・・・。聖人君子を気取って倫理・道徳の観点から説くべき?あるいは誤解を恐れず生物学的見地から人間が備える本能や潜在的獣性について解説すべき?いやいや、色恋沙汰だけはノーコメントが無難、黙して語らずが「最も」良い。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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