思うところ183.「敬遠されるその理由(わけ)」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ183.「敬遠されるその理由(わけ)」




    <2024.11.14記>
    月初のコラム(№182)で当社の事務所移転完了をご報告した。不動産会社はとかく移転先の確保が難しいと言われるのだが、幸いにも当社は創業の時でさえ憂き目に遭うことなく現在に至る。だが、巷では同業者の事務所探しの苦労話を良く耳にするし、それは一般論として事実だと思う。不動産会社がなぜ敬遠(嫌悪)されるのか、その理由を少し考えてみる。

    まず、何と言っても不動産業界に対する世間の評判が今一つ宜しくない。TVドラマや小説の中では必ずと言って良い程に不動産屋=千三つや(嘘つき)・周旋屋=悪人といった扱われ方である。先頃、「正直不動産」というTVドラマ(夏原武氏原案の漫画をNHKがTVドラマ化、主演:山下智久さん)が高視聴率の結果を残したが、正直であるのは当り前の事であって其処に焦点をあてるのは「不動産屋=嘘つきばかり(正直者は珍しい)」との誤った認識を流布しているようなものだ。そのような決めつけには悪意のアンチテーゼを感じざるを得ない。そもそも平然と「不動産屋」と呼ぶ人が多いがその呼称「屋」の部分に侮蔑のニュアンスを感じてしまうのは私だけなのだろうか。複雑な利害関係が絡み合う不動産取引においては、利益相反関係の渦中にあって何らかの軋轢が生じることも多く、小さな行き違いが大きな紛争に発展することもある。その時は往々にして我々(不動産会社)が悪者扱いされてしまう。そういった言われ無き負のイメージは何とも虚しい。

    その他の理由を挙げるとすれば用途の問題だろうか。当社のように特定の人しか来店しない不動産会社の事務所と不特定多数の人が頻繁に出入りする住居系賃貸仲介専門の駅前不動産の路面店のイメージが混同されているように思う。誤認している貸主(ビルオーナー)も多いから「事務所として使うと言うが実態は店舗ではないのか?」との疑念を持たれ易い。だが、それは事実であったり無かったりする。なぜなら、一概に不動産業といっても様々な業態があるからである。売買専門と賃貸専門では営業手法が全く異なるし、オフィス・店舗・住宅(その他、工場・リゾート・ホテル等々)と各社の得意分野は異なる。業務別に分類すれば、(コラム№39で紹介した通り、)資産管理業務(AM)もあれば、賃貸経営管理業務(PM)もあるし、建物管理運営業務(BM)や施設管理業務(FM)も不動産業界の一つの分野と言って良いだろう。コラム№20では不動産業界における職種もまた色々であることを紹介してある。(因みに当社は営業エリア内なら全対応可能な総合不動産会社)

    実は不動産業に携わる者の知識と経験こそが懸念材料として貸主の受け入れを阻害しているのではないか、との穿った見方もある。その拒絶反応は弁護士(法律家)の受け入れを拒むビルオーナーの心理状態に近い。大家(貸主)と店子(借主)との間では賃料交渉をはじめ、設備の不具合から建物老朽化や貸主の自己都合による立退き問題に至るまで様々な問題が発生する。万が一、賃貸借関係で揉めた時に不動産に詳しい相手(借主)では、「自分は言い負かされてしまうのではないか?」と心配するあまり疑心暗鬼になってしまう貸主の気持ちも分からなくもない。

    では、なぜ不動産会社である当社が事務所探しで憂き目を見たことが無いのか。過去3度の事務所移転を振り返ってみれば会社設立準備期間においては港区六本木の一等地にビルを保有する友人が頼んだわけでもないのに無償で事務所を提供してくれた。其処で平成22年10月に会社登記を済ませ、予め営業拠点にすると決めていた日本橋茅場町で事務所探しをすることになるのであるが見学は僅か2物件、その2物件目の見学にして即決した事務所こそが平成22年12月より本年10月まで借り受けることとなった山本ビル(住所:中央区日本橋茅場町1-11-9、当初は4階B区画に入居)である。社の黎明期は私が勢いと直感のみで決断していた頃だが、原契約締結時のビル所有者、今は亡き先代のビルオーナーも迷うこと無く入居申込に快諾してくれたのはリーマンショックから抜け出せない不動産デフレ不況下にあって空室の多さに悩んでいたことの影響が少なからずあったように思う。新設会社は実績が無い代わりに負の財産も無い。老舗企業の倒産多発期においてはある意味で「強み」ですらあった。当時の入居審査は私の経歴書を提出したのみで事足り、家賃保証会社の加入さえ求められなかった。また、創業メンバーに賃貸オフィス専門会社の出身者と司法書士事務所で補助者の経験を持つ者が居たので事務所探しも会社設立登記・本店移転登記も苦労は無かった。その事務所(4階B区画)が手狭になって平成28年5月に同ビル7階A区画への拡張移転を思い立った私は、起業時にせっかく施した思い入れのある内装が無駄にならぬよう、4階B区画につき、普通借家契約を終了させると同時に改めて転貸を可能とする定期借家契約(マスターリース契約)を締結、そのうえで7階A区画を借り受けたのである。つまり、薄利ながらも拡張移転と同時にサブリース事業開始の足掛かりとしたのである。まさに空室に悩むビルオーナーとWin-Winの関係を再構築できたように思う。リストラ(=リストラクチャリング、事業の再構築)とは冷徹な人員削減のことを指すのではなく、本来はこの種の心ある改善・改良の類いであるべきと私は考えている。

    今回の事務所移転に至っては移転先を探すまでも無く、「偶然」にも目と鼻の先にある岩崎ビル2階(=当社管理物件)に空室が出た。まるでビルが我々の入所を待ち望んでいたかのような絶妙のタイミングだった。そのような巡りあわせのお陰で今月初めに同フロア内に貸会議室2区画(事務所の一部を時間貸しができるようリニューアルした空間)を擁する新事務所(中央区日本橋茅場町1-11-6岩崎ビル2階)への拡張移転を難無く果たしたのである。私は常に時の運に、何よりも人(縁)に恵まれていた。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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