<2025.3.1記>
私の生まれ故郷(静岡県富士市)の主要な産業は今も尚製紙業である。湾岸部の工業専用地域一帯に大規模な製紙工場が幾つもあって巨大な煙突が高さを競い合うかのように聳え立つ。製紙業の発展は東名高速道路を主軸とする大都市圏への優れた交通網と富士山の雪解け水に由来する豊富で綺麗な地下水のお蔭であるが、その水質とは裏腹に高度経済成長期には深刻な大気汚染の街として有名になってしまった。(もし、万葉歌人の山部赤人が観たら嘆き悲しむに違いないが昭和46年に放映された特撮映画「ゴジラ対ヘドラ」に登場する架空の公害怪獣ヘドラは地元「田子の浦港」のヘドロから生まれたという辛辣な設定である。)
日本中何処でも高い煙突が赤と白のツートンカラーになぜ塗装されているかというと航空法第51条の定めにより地上60m超の建物には昼間障害標識(又は航空障害灯)の設置が義務付けられており、航空機から発見されやすいように目立つ色付けをして障害物の存在を知らしめる為である。その塗り方は全長を7等分して上から赤と白(赤色は正確に言うと「インターナショナルオレンジ」と呼ばれる黄赤)の配色とする規則になっている。(東京タワーも昭和61年の航空法改正で竣工時の11等分から7等分に配色変更)子供心に大気汚染を憂いていた当時小学生の私が社会科見学で溜息交じりに見上げた煙突はおそらく高さ90ⅿ位(煙突を高くするのは臭気と汚染物質をできる限り高所で拡散して濃度を薄める為)、オフィスビルなら30階建相当。引率してくれた工場長が「10ⅿ間隔で紅白に塗り分けてあるんだよ。どの辺が何メートルの高さなのか分かり易いでしょ。」さも自分のアイデアでそうしたかのように誇らしげに説明していた。今ならその紅白は13m弱の間隔に塗り変えられているはずだ。
煙突の色分け塗装の話は不動産業務にも応用できる。例えば、建設資材のコンクリートブロック。JIS(日本工業規格)で定められたサイズ(化粧ブロックを除く)は高さ19cm、幅は39cm(厚みは10・12・15・19cmの4種類)である。だから計測などせずとも7段詰まれた塀なら一目で高さ1.4ⅿ(ブロックの高さ19cm+目地1cm換算)と推定できる。尚、敷地の奥行はブロックの列数に40cm(ブロックの幅39cm+目地1cm換算)の掛け算をすれば良い。50列のブロック塀なら奥行は20ⅿ位だということ。コラム№165(塀)でも述べたが高さが1.2ⅿ超にも拘らず、3.4ⅿ内毎に控え壁(主たる壁の支持・補強の為に設置を義務付けられている小壁)が設置されていないとすれば建築基準法違反が疑われる。
間口寸法の推定ならL字溝の数で見極めるテクニックがある。L字溝とは道路の排水設備であり車道と敷地・歩道との境界線の役割も果たしている。いざ設置されてしまうと判りづらいが資材単体としての原形(断面)はその名の通りL字である。その資材名に馴染みが無かったとしても毎日何処かで目にしているはずだ。L字溝1個の幅は特別仕様でない限り60cm。敷地前のL字溝を数えて20個あったらその敷地の間口は12ⅿということ。だから、コンクリートブロック塀が敷地奥に向かって50列ある整形地は240㎡(72.60坪)位だと面積までもが容易に推定できるのである。(間口12m×奥行20m=敷地面積240㎡)
同じ理屈で事務所の内寸も推定可能だ。量産品のタイルカーペットが500角(縦横50cmの正方形)だということを知っていれば目視で横幅も奥行も大体分かる。500角の規格が主流である理由は4枚の正方形(100cm×100cm)で1㎡と計算し易いからだろう。尚、1帖は1.62㎡、1坪は3.30578㎡である。因みに応接室や水廻り(給湯室・トイレ等)まで勘案した標準的な事務所の1人当たりの必要面積は3坪(≒9.91㎡≒6.1帖≒タイルカーペット10枚)と言われる。だから、社員10人が常駐する一般的な事務所なら30坪位が丁度良いはずである。これに社長室、会議室、倉庫等の要・不要を加味して自身(自社)が検索すべき面積を割り出すと良い。
不動産取引に携わる営業マンたる者、歩測のノウハウも不動産業界のイロハのイ。自身の歩幅を把握しておけば歩測で間口や道路幅員などの概算値が分かる。私の歩幅は約60cm、12mの間口なら20歩、4.2mの道路なら7歩になる。売主から借家人やご近所に(売却を考えていることを)覚られぬように現地を見て欲しいとのオファーがあった時などに有効活用できる職人技である。正確な数値は必要に応じて後で調べれば事足りるだろう。我々は精密機械を扱っているわけではない。顧客の要望に即応でき、かつ大局的な分析力が求められているはずである。
今回の記事を些末な雑学と軽んじること勿れ。不動産取引に関心のある読者のみならず、もうすぐ不動産業界にデビューするフレッシュマン諸君にとっても思い掛けない場面で役に立つ基礎知識であるはずだ。学問も仕事も基礎があってこそ応用が利くものである。
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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